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「何が起こっているか分からないって顔ですね」
少女は微笑みながら言った。
当たり前だ。こんな理解し難い現象を、どう処理すればよいのだ。
まじまじと少女を見つめると、夢とは違う所があることに気付いた。
(ワンピースが、赤い……)
純白だったそれが、真っ赤に染まっている。何か訳があるのだろうか。
思考がまとまらず眉間にしわを寄せていると、少女はそんなノゾミの心を見透かしたかのように、優しく言った。
「あまり悩まないで下さい。これからちゃんと説明しますよ」
そしてノゾミの隣、ベッドの淵に腰掛けた。
「僕はミコトといいます。貴方は?」
「…………ノゾミ」
「ノゾミ、さん? 可愛らしいお名前ですね」
「俺だって、こんな女っぽい名前嫌だし」
幼い頃はよくそのせいでからかわれたのだ。決して好きな名前ではない。
「そうでしたか。では、ノゾ君とお呼びしても?」
「好きにしてくれ」
「分かりました、ノゾ君」
彼女が笑うと、その床につきそうな程長い髪がふわっと躍る。ノゾミはそれを手で押さえつけてしまわないように気を付けた。
「自己紹介はこの辺でいいか?」
「ふふっ、そんなに焦らなくても、時間は沢山ありますよ」
そんな事を言われても、早く続きを話してほしいと思うのはどうしようもない。この少女――ミコトをじっと見つめ、その口から発せられる言葉を待った。