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「もしノゾ君が自分を大切にしないのなら、僕がその分大切にします。だから、もっと僕に頼って下さい」
ミコトによってどこまでも沈んでしまいそうだった気分を寸前で引き上げられ、それに伴うように顔を上げた。
「……んで、そんなに俺のこと……」
「言いましたよね。ノゾ君が僕と同じ体質になってしまったのは、僕の責任です。それに、こんなに人と深く接したのは初めてなので、いっぱい役に立ちたいんです」
どこまでも素直な少女は、どこまでも真っ直ぐな瞳でノゾミを見つめてくる。自分で尋ねたくせにその視線が妙に決まり悪く思えてしまい、ノゾミは遠くへ眼をやった。
「それにしても、昨日はよく俺のこと見つけられたな」
殺人鬼に襲われそうになった際、ミコトが飛び込んできたことについて伺うと、ミコトはフレンチトーストを一口食べてから口を開いた。
「昨日は……何か嫌な気配がしていたので」
「嫌な気配?」
ノゾミが聞き返すと、ミコトはこくりと頷いてフォークを皿の上に置く。
「お昼過ぎ、くらいでしょうか。どこからかおぞましい萌しがあったんです。それは一旦消えましたが、夜になってからまた感じました。それは昼間よりはっきりしていて、方角も何となく分かったんです」
それを追いかけてきたらあの場面に遭遇した、ということらしい。
それを聞いたノゾミには、ある憶測が浮かんできた。
「昼過ぎといったら、俺があの殺人鬼と最初に近づいた時だ。夜にもその気配を感じたのなら、俺とあいつが接触すると、ミコトがそれを知覚できるってことだよな……?」




