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3-2-3

「じゃあ俺たちは、あの殺人鬼を探さなくちゃいけないってことか……」

 その台詞には絶望が半分、諦めの気持ちが半分織り交ぜられていた。あんなに派手な事件を何件も起こしておいて全くその足跡を残さないような人物を、ただの一般人でしかないノゾミに探せるのだろうか。

 がっくりと項垂れるノゾミに、ミコトはすかさずフォローを入れる。


「まだあの人が三人の内の誰かだと決まった訳ではありません。これはあくまで推測ですから」

 だが彼が何かしらの鍵を握っていることは確かだ。彼との接触を(はか)ることは、損にはならないはず。それを告げると、ミコトは一つの提案をした。

「ショウに聞いてみるのはどうですか?何か知っているかもしれません」


「あいつに、聞くのか……?」

 その時、ノゾミは僅かに怪訝(けげん)な顔つきをしていた。

「あの、何か気に障ることでも?」

「そうじゃない。人に頼ってばかりの自分に、嫌気がさしただけだ」


 恐らく二人がいなかったら、ここまで来ることはできなかっただろう。ショウには多くの助言をしてもらったし、昨夜はミコトが現れなかったら確実に刺されていた。

 いつも独りでなんとかしてきたのに、急に誰かの助けがないと何も出来なくなってしまった自分が情け無くなってしまったのだ。


「頼るのは、悪いことでは無いと思いますよ」

 そんなノゾミの心境を見透かしたように、ミコトが落ち着いた声で言った。見透かされるなどあり得ないことなのに、すでにその例外を目の当たりにしていたので、どこかで心得てしまっていた。

「ノゾ君は今までとても辛かったと思います。でもこれからは少し、いえ、たくさん頼ってくれても良いんですよ」


 そんな優しい言葉をかけられて、ノゾミは(いささ)か緊張の糸を緩めていた。だがそれも完全に弛緩することはなく、常に一定の硬度を保っている。

 理由は分かっていた。父だったあの人のせいで神経を擦り切らす生活が続いていたので、気を抜いてはいけないという自らへの戒めがまだ残っているのだ。


 家族の縁が切れた今でもその存在を意識するのは良くないと分かっていても、どうしてもトラウマのように脳裏に焼き付いている。いつになったら逃れられるのかと思っても、結局答えは"死んだ時"に行き着くのだった。

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