1-2-2
聞き憶えのある声だ。
ノゾミは右腕をどけて眼を開けた。やはり眼に入るのは天井だ。
だが、視界の端に何か白いものが見えた。そちらに顔を向けると、なんと其処には少女がぽつんと立っている。
「!?」
驚きのあまり、眼を見開いたまま声が出なくなる。
枕元に人が立っているなんて気が付かなかった。ましてや誰かが入って来た気配すら無かった。
(一体、どうやって入ってきたんだ?)
ノゾミは急いで起き上がるが、チューブが邪魔な上に片手しか使えないので素早く動けない。
「お前、何でそこに……」
何で其処にいるんだ、と言いかけてノゾミは息を呑んだ。其処に立つ少女が、あの夢に出てきたのと全く同じ容姿だったからだ。
真っ白な髪に、透き通るような肌。
青い、大きな瞳でノゾミを見つめ、鈴のような声で話しかけてくる。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか。僕達は前に一度逢っているんですよ」
「――夢の中でか」
「はい」
夢の中で出逢った少女が今、目の前にいる。
いや、もしかしたらこれ自体が夢なのかもしれない。
そう思ったノゾミは、自分の頬を抓ってみた。
「……痛い」
「何してるんですか? これは夢ではないんですよ」
「は、はあ? じゃあ何でお前は俺の夢に出てきたんだ」
「それは――――貴方の命を救うためです」
「命を、救う……?」
ますます訳が分からない。
第一、助けを求めたりはしていないのに。
この状況を理解するには情報が少な過ぎて、ノゾミはただ混乱することしか出来なかった。