3-2-1 新たな鍵
テレビのキャスターが伝えるニュースに、食事も忘れて食いついた。事件の詳細が、次々とノゾミの頭に流れ込んでいく。
警察によると、刺された十五人は全員が命を落としたという。つまり、あの殺人鬼は狙った獲物を全て捕らえたということだ。彼は最近この辺りで頻発している通り魔事件の犯人と同一人物だと考えられているが、依然としてその足取りは掴めていない。
彼は毎回黒いローブを羽織って現れ、その犯行の特徴には、必ずナイフによる刺殺であること、刺されて生き残った者はいないこと、そして一つの事件で十人前後という多くの犠牲者が出ていることが挙げられる。また、必ず被害者の内一人は体の一部――多くは腕――が切り落とされ、犯人に持ち去られているらしい。
(腕なんて持ち帰って、どうするんだろうな)
恐らく、その疑問は誰もが抱いていることだろう。襲われた者同士には何の関係もみられないことから、警察は通行人を無差別に狙った快楽殺人の可能性も視野に入れているという。
「ノゾ君、大丈夫ですか?」
「…………」
「ノゾ君?」
「えっ」
自らの考え事に没頭していて、ミコトに呼ばれたことに気が付かなかった。ミコトが再びノゾミに問いかける。
「不安なことでもありますか?」
「不安っていうか、気になることが」
もしかしたらミコトにも関係がある事かもしれないと思い、話しておくことにした。
「俺、昨日の昼間にあの殺人鬼と逢ったんだ。そいつは俺を刺そうとしてたのに、途中でやめた。俺に何かあるって、気付いたみたいだったんだ」
「その人、昨夜ノゾ君を殺そうとした人ですよね」
「ああ。その場で殺らないで、わざわざ夜に出直したってところも気になる」
それを告げると、ミコトはしばし考え込み、やがて一つの推論に至ったらしい。




