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3-1-3

「じゃあ朝飯でも食べるか……って言っても、何があったかな」

 ノゾミは台所へ向かい、冷蔵庫を開けてみた。そこには母が作り置きしてくれたおかずがいくつかあったが、肝心のご飯が無い。そもそも朝食はパン派なので、白米があっても食べないだろうが。


(確か、食パンがあったはず)

 そして、冷蔵庫のドアポケットに入っていたは卵と牛乳。

「フレンチトーストでも作るか」

「ふれんちとぉすと?」

 背後にいたミコトが首を傾げる。そういったものを食べる機会が無かったために、知らないことも多いのだろう。


「卵を牛乳で溶いて、パンを浸して焼くんだ」

 なぜか今は甘いものが食べたい気分だった。疲れているせいだろうか。

「ノゾ君、お料理できるんですか」

「少しだけな」


 料理については、以前に父の気を引こうとしてかじったことがある。母や弟の分も含めて夕食を(こしら)えたこともあったが、父だけは褒めてくれなかった。さすがに家族の前では体裁を保とうとしたのだろう。平らげてはくれたのだが、後で不味いだの吐き気がするだのと散々(なじ)られた。その言葉は今でも耳から離れない。


「僕も食べたいです。ノゾ君が作ったお料理」

「は……俺なんかが作ったの食べても、美味(うま)くないぞ」

「そんなことないです。きっと美味(おい)しいはずです」

 何の確証もないのに、そんなことを言わないでくれ、と喉元まで出かかった言葉を呑み込んだ。純粋にノゾミの料理を食べたいと言ってくれた相手に対して言う台詞ではないと思ったからだ。


「……失敗するかもしれないし」

「なら僕もお手伝いします。それでも美味しくなかったら、僕のせいです。お料理なんてしたこと無いんですから」

「そんなに、食べたいのか……?」

「はいっ」


 もう誰かに手料理を食べさせることなんて無いと思っていたのに。ミコトの笑顔は、そんな予想をあっさりと裏切るのだった。


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