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3-1-1 つかの間の


 ――――どこからか、アラームの音が聞こえる。

 目覚まし時計はセットしていなかったはずだが、なぜだろう。

(うるさい……まだ早すぎるだろ)

 眼を瞑ったまま腕を伸ばして音の根源を探り当てようとするが、なかなか見つからない。舌打ちをしながら手を動かし続けても、一向に求めていた感触は触れなかった。


 ノゾミは仕方なく目を開けて、うるさく鳴り響くそれを見いだそうとする。だが、まず眼に入ってきたのは、まばゆい朝日に輝く白い髪だった。

「ミ、コト……?」

「あっ、ノゾ君っ! これ、どうやって止めるんですかぁ」

 振り返ったミコトは、いつになく慌てた様子で目覚まし時計を握り締めていた。恐らく、誤ってアラームを鳴らしてしまい、止め方が分からないのだろう。


「……貸してみろ」

 ノゾミはそれを受け取ると、側面に付いているスイッチをオフに切り替えた。ようやく静かになった部屋に、しばしの静寂が訪れる。

 手に持った時計を見ると、時刻は六時半過ぎを指していた。夏休みに入ってからかなり悠々とした生活を送ってきたので、まだ睡魔がノゾミの体を支配している。


「悪い、もう少し寝かせてくれ……」

「はい。昨日は帰るのが遅かったですからね。起こしてしまって済みません」

「ん……」

 朝は早くても遅くても、低血圧のノゾミは完全に目が覚めるまで時間がかかるのが常だ。それに加えて昨日までの疲労が更に体を重くしている。

 ノゾミは目覚まし時計をローテーブルの上に置くと、再びソファに身を(うず)めた。


 ひとり暮らしを始めてからは、学生にしては贅沢な1LDKのこの部屋に住まわせてもらっている。これも母の弟、つまりノゾミの叔父が所有するマンションだから特別料金で借りているのだ。

 昨夜ミコトと再会して家に帰ってこられたは良いものの、さすがに同じ布団で寝る訳にはいかないので、ノゾミが寝室としていた部屋にミコトを寝かせ、自らはリビングのソファで眠っていた。フローリングの床で寝るよりはましだったが、十分な睡眠が得られたとは言いがたい。

 

 それでも、文句を言うつもりは全くなかった。誰が悪いとも感じていないし、致し方ないことだと割り切っている。ただ、この問題は早々に解決する必要があるだろう。

 と、そこまで考えたところで、ノゾミの意識は再び眠りの中へと落ちていってしまった。

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