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「俺、ミコトは生まれた時からずっと独りなんじゃないかって思ってたんだ。それがやけに気になって、早くミコトを見つけなきゃって、焦ってた」
またしても自分は内に秘めていた気持ちを曝け出している。これもショウの影響なのだろうか。いや、そうに違いない。そうでなかったら、こんなに衝動的になることはノゾミにとってあり得ないことだ。
「でもお前にはショウがいて、他の三人がいて、今まで助けた奴らにもちゃんと見えてたんだろ? それに俺は、お前と同じ体質になったんじゃないのか? だから……自分のことを異質だなんて言わないでくれ」
ミコトが自身を否定することでノゾミも否定されてしまった気が、どこかでしていたのかもしれない。だがノゾミが言いたいのはそんな事ではなく――
「ミコトが異質だって言うなら、俺もそうだ。異質なのが二人もいるんだから、もうミコトは他とは違うなんて思う必要はない」
一体、ミコトはどんな気持ちでこれを聞いているのだろう。自分にもショウのような力があれば、と僅かに彼女が羨ましくなった。
でしゃばりすぎだと言われるのも覚悟の内だったが、これだけは伝えたかったのだ。
「ノゾ君は……」
ミコトが小さく呟いた。
その後に続く言葉を待つ間、ノゾミの心拍数はどんどん上がっていく。
「ノゾ君は、優しぎますよ……」
絞り出したような声で告げられ、やはりまずい事を言ってしまったのだろうかと思ったノゾミは、謝ることしか出来なかった。
「ご…ごめん」
「咎めている訳ではないんです。こんな事言ってもらうの、初めてなので」
困ったように笑うミコトの表情は、自らに自信が持てないノゾミの不安を煽ることになった。
その瞬間に、ミコトの腕を掴んでいたことを意識してしまい、ぱっとその手を離す。
「悪い、俺、変なこと言ったか……?」
だがミコトは軽く首を横に振り、今度はノゾミの手をそっと握った。
「ノゾ君は変なことなんか言ってませんし、嫌だなんてちっとも思ってませんよ。僕は、ただ嬉しいだけなんです」
ひんやりとしたミコトの手が、徐々にノゾミの頭を冷やしていく。
透明になった意識の中に、ミコトの言葉は何の雑念にも遮られず、真っ直ぐノゾミの元へ届いていった。
「こんなに素敵な言葉を貰って、どうしたら良いか分からなくなってしまって……こんなに幸せな悩み事はないですよ」
柔らかく綻ばせたその顔に、一切の戸惑いや躊躇いといった感情は交ざっていなかった。
それにつられて、ようやくノゾミも口元を緩める。
「じゃあ、帰ろうか」
「――はいっ」




