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「アンタはもっと前向きになった方が良いと思うわ。そんなんじゃ逆に辛いでしょ」
「? 別にそんなこと――」
「じゃあね。アタシはもう行くから」
ショウが言ったことの真意が分からなくて、咄嗟に否定しようとするが、その上からショウの言葉が覆い被さった。
そのまま立ち上がってその場を後にしようとするショウを、ノゾミは慌てて引き留める。
「ちょ、ミコトと一緒に行かないのか?」
「「え?」」
「へっ?」
なぜか二人の視線が突き刺さり、いたたまれない雰囲気が押し寄せる。
「えっと、ミコトはショウの所に行くんじゃないのか……?」
今度は控えめに、それでも意味は誤解のないように言う。
するとミコトは頬を紅く染めて早口に、少し上擦った声を出した。
「あ、ああの、僕、ずっとノゾ君の側にいられると思って…でも、そうですよね、ずっとは邪魔ですよね」
(ずっと? ずっと、って……)
「ッ!」
一拍おいて、ようやくノゾミの理解が追いついた。
「ちょっと、アンタ達病院では四六時中一緒だったんでしょ? 今更照れることでもないんじゃないの?」
ショウが呆れたように口を挟むが、病院と家とではまた状況が違うのだ。 居てくれないと困ると言った自らを振り返ると、何だかとても恥ずかしいことを口走ってしまった気がして、じわじわとミコトの赤面が伝染してしまう。
「お、俺は、『そばに居る』っていうのは、心理的な意味だと思ってて……」
「往生際が悪いわね。ミコトを心配させないためにも、一緒に居てあげなさいよ」
「でもッ」
「まぁ頑張りなさいよ。アタシはもう行くから、またね」
半ば強制的に会話を終わらせると、ショウは軽く手を振って公園の出口へと向かって行く。
取り残された二人は、しばらくベンチに座ったまま呆然としていたが、やがて気まずそうに目を合わせる。
「あー……えっと…か、帰るか?」
「――――はい」