1-2-1 白い少女
(あの子、あれからどうなったんだろ……)
結局あの後一度も夢を見る事はできず、心にもやもやとした物を抱えながら一週間が過ぎてしまった。
ノゾミは一般病棟に移り、警察の事情聴取も終わってひと段落ついたところだ。母は今弁護士と相談中らしい。
車の運転手の有罪はほぼ確定だろうが、ノゾミにはあまり興味の無いことだった。自分の事にさえ興味が持てないのだから。
だがそんなノゾミにとって、たった一人の少女の事がこんなにも気になるというのは、自身をも惑わす初めての感覚だった。
この胸のもやもやを収める術も見つからず、ノゾミは少しでも気を紛らわそうと寝返りをうってみた。
大部屋に空きが無いとのことで個室を使わせてもらっているから、此処はとても静かだ。
集中治療室は夜でも何かしらの音がしていた。機械の音、医者や看護師の話し声に足音。急患が入るとそれはさらに酷くなる。 正直、寝ている間に目を覚ますことが何度もあった。と言っても、ずっと病床についていたので、寝ているとか起きているとかいうのはあまり関係が無かったのだが。
「はぁ〜、暇だ」
此処にいてもやる事が何も無い。
相変わらず胸にはチューブが繋がっているし、息苦しさはどうしても拭えない。医者には明日にでも外せそうだと言われたが、外れたところでまだ退院は出来ない。暫く様子を見なければならないのだそうだ。
別に早く退院したい訳でも、ずっと此処に居たい訳でもない。要するにどうだっていいのだ。何処に居たって自分の生きている意味など見つからない。
「もう、早く死にたい……」
右腕で顔を覆い、心の奥から出てきた言葉をそのまま声にのせてみた。その時――
「貴方は死にたかったのですか? それは失礼な事をしてしまいましたね」
何処からか、声が聞こえてきた。