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2-12-1 ほどける

 それはつまり、今風に言うとテレパシーとマインドコントロールができるということだ。現実味に欠ける話だが、彼女がそもそも人間ですらないのだし、昨夜の出来事を説明するにはそうでもないと辻褄が合わないだろう。

「でも、普段は全然力を使わないんだけどね」

「そうなのか?」


 ノゾミが驚いたような声を出したのは、そんな便利な力があれば、ショウなら簡単に使いこなして自らの利益としているのだと思っていたからだ。

「だって、皆が持ってない力を持っているより、皆と一緒の方が楽しいじゃない」

 楽しいとか楽しくないとかいう問題なのか、と一瞬疑問に思ったが、ショウの言いたいことはまだ残っていたようだ。


「それに、精神で思ってることって、聞かれたくないでしょ。心理操作だって、人が考えてる事を勝手にいじるのは結構罪悪感を感じてるのよ」

 能ある鷹は爪を隠す、ということわざがあるが、これもそう言って良いのだろうか。謙虚というのも、慈悲深いというのも違う気がする。

 どこかに切なさを秘めたような、そんな優しさだった。


「だから緊急事態の時以外は使わないようにしてるの。昨日の夜は、アンタのことが気になったから、アタシもあの辺りをうろついてたのよ」

「じゃあ、警官を誤魔化した時は?」

「それはね――」

 ショウが手にしていた巾着を漁って何かを取り出す。指に挟まれているそれは、名刺サイズの紙切れだった。


「白紙じゃないか」

「ええ、これを学生証だと思わせたの。お姉ちゃんがいるっていうのも嘘よ」

「そう、だったのか……」

 何だか一度にたくさんのことをカミングアウトされて、頭の整理が追いつかなくなってきた。

 とにかく、ショウには不思議な力があるのだということは噛み砕くことができたが、やはり現実感が涌いてこない。


「何よ、その腑に落ちない、みたいな顔は」

「だってそうだろ。こんな現実離れしたことが一度に起こって」

「アンタだって、ミコトと同じ体質になってるんだから、いい加減認めなさいよね」

 そう言われては身も蓋もない。ノゾミはただ、死なない体を持て余している自分をどうしたら良いか、対処に困っていただけだ。

 だが本当に死なない体を実感するのは、それこそ刺されるなり首を絞められるなりしてからなのだろう。

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