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2-11-1 精神

「落ち着いたか?」

「はい……済みません」

「ミコトが謝ることはない。今回のことは俺に非がある」

 ミコトはひとしきり泣いた後、ショウとノゾミに挟まれてベンチに腰掛けていた。涙の跡を手で擦りながら、鈴のような声で尋ねてくる。


「僕は、ノゾ君のそばに居てもいいんですか?」

「むしろ居てくれないと困る――また無神経なこと言うかもしれないけど……」

「それは、今日のことでノゾ君はとっても優しいのだと知りましたから、大丈夫です」


 俺は優しくなんかない、と言いかけて口をつぐんだ。あまり食い下がっても、堂々巡りが続くだけだ。

(俺があんなに感情的になるなんてな)

 想いのままに言葉をぶつけたのは、最後がどのくらい前かすら忘れてしまった。いつからか自分の感情を押さえ込むようになって、しまいにはそれを持つことさえしなくなっていた。


 それなのに、ミコトを探すうちにノゾミの中には溜めきれない程の気持ちが(つの)っていき、それを()ぜさせてしまったかのようだった。

 久し振りに胸の内を(さら)け出したことに多少の気恥ずかしさを感じていると、ショウがミコトの背中とベンチの背もたれの間からひょっこりと顔を出した。


「それじゃ、二人は仲直りできたってことでいいのね?」

「ああ。ショウにも迷惑かけたな」

「全くよ。まさか、アンタが探してたのがミコトで、ミコトが探してたのがアンタだったなんて」

 先程からショウの発言には引っかかるところがある。まるでミコトを以前から知っているかのような――


「って、ショウにはミコトが見えてるんだよな?」

「そうだけど……ミコト、アンタ何も話してないの?」

「それは……まさか僕もこんなことになるとは思ってなかったので」


 どうやら二人の間では会話が成立しているようだが、ノゾミには何のことだか全く分からない。ミコトに再び逢えたのは喜ばしいことだが、なぜこの状況が生まれたのかは、二人からの説明を待つしかなさそうだ。

「ノゾ君、突然ですが――」

 急に真剣な顔つきになったミコトにつられて、ノゾミも居住まいを正した。

 それでも、その口から発せられる台詞を、平常心で受け留めるには(いささ)か準備が少なすぎた。


「ショウは人の精神を具現化した存在――――あなたの精神を殺せる唯一の人物です」


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