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2-10-4

「死ねェエェエエエ!!」

 ナイフがノゾミの喉を掻き切ろうとする。

「――ッ!」

 寸前で躱すが、刃先がノゾミの頬を掠め、その軌道は赤い筋となって肌に残る。血が頬を伝い、汗と混ざって顎の先から滴り落ちた。


「何避けてんだよ。死にてェんだろ」

(ほんとだ。何で俺、避けたんだ……)

 痛いのは嫌だから? 苦しいのが怖いから?

 死ねないという自覚が足りない今、刺されてみる価値はあるのではないだろうか。


(……次は避けない)

 覚悟を決めて体勢を整えたノゾミは、息を大きく吸ってから、ゆっくりと吐き出した。すると脳内がクリアになって、この状況をすとんと飲み込めるようになった。

(俺はここで刺される。そんで、本当に死なないのかどうかを確かめる)

 死ねたら本望だが、もし死ななかったら……

 なんてことは、あえて考えなかった。


「次は逃げんなよォ」

 彼もナイフを握り直し、今度こそ仕留める、といった形相でノゾミを睨みつける。

(これでいいんだ、俺はここで――)

 ショウが何か叫んでいるが、それはどこか遠くから聞こえてくるように思えた。


 男が刃先を向けた先にはノゾミの心臓がある。

 まるでミコトを殺す時のようだった。もしかしたら、こうなる運命だったのかもしれない。

「そんじゃ、逝ってらっしゃァい」


 ナイフがノゾミの左胸をめがけて、勢いよく振り下ろされる。

 ノゾミは目を固く閉じ、これから来るであろう衝撃に耐えるべく全身に力を込めた。

「お前を殺せて、良かッたぜ!!」

「……っ」

 だが衝撃は、別のところからやって来た。


「ノゾ君!」

 白いものに視界を覆われたかと思うと、何かに突き飛ばされて、ノゾミは腰から地面に倒れ込んでしまった。





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