表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/168

1-1-5

「それでは、今日の面会時間はこれまでとなりますので、お母様はまたお越し下さい」

「はい、有難う御座いました」

 母は深々とお辞儀をしてからノゾミに言った。

「それじゃ、また明日来るからね。取り敢えず、ノゾミが助かって良かったわ」


 そして看護師に案内され集中治療室を出て行った。

(助かって良かった、か……)

 本当は助かりたくなかった、なんて母には口が裂けても言えない。

 これから大変だと思うけど頑張っていこうね、と医者が言っているが、ノゾミに頑張る気などさらさら無い。

 席を立つ医者の後ろ姿を見つめながら、ぽつりと呟いた。

 

「本当は、死にたかったのに……」


 事故に遭ったのは全くの偶然だ。

 生きる意味を求めていた少年は、生きる気力も死ぬ勇気も無いままに、何かを捜すかのように、深夜の街に身を委ねていたのだ。

(俺、何でまだ生きてるんだろ)

 そういえば目が覚める前、妙な夢を見た。少女を殺す夢だ。いや、正確には殺せたのか分からない。ナイフを押し込んだ瞬間目が覚めた為、少女が本当に死んだのかどうかは不明だ。


 だが、あれはとても夢とは思えない程リアルだった。ナイフを握った時のグリップの感触や少女のひんやりとした手の柔らかさ。全てが本当に触っているかのようで、未だにその感覚が肌に残っている。


 それに、普段の自分では口にはしないような事を言っていた。殺してやるよ、とかお前を殺せて良かった、とか。夢の中とはいえあんなに積極的に人を殺すなんて、未だに信じられない。

  もしかしたら自分が死ぬことを望んでいたのではなく、他人を殺すことを望んでいたのかもしれない。


 自分は、どうかしてしまったのだろうか。

 あの少女に逢えれば、何か分かるのだろうか。

 また夢を見れば彼女に逢えるだろうか。あの不思議な少女に。

 彼女の真っ白な髪とワンピースが、闇に包まれた空間の中で一際目立っていたのを憶えている。まるで、何かの目印のようだった。

 次々と想いが湧き上がってくる中、まだ貧血が治っていないらしく、さっきから眠くて堪らない。


 ノゾミはゆっくりと瞼を下ろし、襲ってくる睡魔を受け入れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ