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「俺の方こそ驚いたよ。同じ場所でショウと逢うなんて」
「アンタも学習しないわね。もし、またお巡りさんに見つかったらどうするの?」
「それはお前も、だろ」
ショウはいたずらっ子みたいに笑って小さく舌を出した。
「それでアンタは、お尋ね人は見つかったの?」
勘が鋭いショウのことだ、聞くまでもなく分かっているのだろうに、あえてノゾミに問うてくる。
「見つかったように見えるか?」
「ぜーんぜん」
こんな時苦笑いでもいいから出来ていれば、もっと場を和ませることができるのだろう。しかしノゾミはゆっくりと溜息を漏らして、彼女の正面に来るように二、三歩進んだ。
「俺は、あいつがいないと自分の願望さえ叶えられないんだ。だから……本気で見つけたいって思ってる」
「アンタの願望って何なの?」
「――――死ぬことだ」
「ふーん」
その声には、感情が入ってないように聞こえた。
出逢って二日目の奴が死のうとしていたところで興味はないのだろうか。ノゾミだったら、なら勝手に死ねばいい、と突き放すところだ。
「別に死にたいって事でも、アンタの願望ならアタシは止めないわ。人の願いは尊重しないとね」
端から聞いたら物騒な会話だが、二人は至って真面目だった。誰かがここを通りかかれば、恐らくその人は、命を棄てようとしているノゾミを全力で止めるだろう。
そんなことを望んでなどいないので、ミコトやショウのように受け入れてくれた方が、気が楽だった。
「ありがとう。俺もこんな体じゃなかったらな……」
「? どういうこと」
「あ、いや、何でもない。気にしないでくれ」
うっかり口が滑ってしまった。死にたいと告げても動じていないショウに対して、油断してしまったのかもしれない。
これは聞かなかったことにしてほしかったが、ショウにも思うところがあるようで。
「ねぇアンタって、もしかして――」
「こーんばーんはー、ちょーっといいかなぁ」
しかしショウの言葉は、場にそぐわない気の抜けた声に阻まれてしまう。




