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2-9-2

 自分が殺されるのを切望するがあまり、頭がおかしくなってしまったのだろうか。そうであってほしい。いや、そうに決まっている。

 あの通り魔に刺された人達は、ノゾミの前で息絶えていく。何かに縋るように伸ばされた手が、虚空を掴みむなしく(くずお)れる。


 それを見て先程までの恐怖が再び甦り、ノゾミは足を縺れさせながらその場から離れた。

(なんだよあれ、何だよあれ、何だよあれ!)

 心臓がばくばくと音を立て、額にはじっとりと冷や汗が浮かんでくる。


 ひとまず図書館のエントランスに駆け込んだが、そこにはノゾミと同じように逃げてきたと思われる人が数人おり、誰もがあの狂気の現場を恐れていた。図書館の職員も慌ただしく行ったり来たりしている。

 当初の目的を果たせるのかどうか心配になってきた時、サイレンの音が近づいてきた。それがパトカーや救急車のものだということはすぐに分かった。


(なんか俺、最近ろくなことがないな)

 事故に遭って死なない体にされた挙げ句、通り魔事件に巻き込まれるとは。

 もしかしたら事故に遭った時から、何かの歯車が廻り出してしまったのかもしれない。最初は小さな歯車でも、隣のそれとがっちり噛み合って、やがて巨大な絡繰(からく)りが動き出すかのように。


 やがて何台ものパトカーや救急車が辺りを取り囲み、さっきの何倍も騒がしくなってきた。うるさいのは好まないので、取りあえず図書館の中に入ることにした。だが当然のごとくその中もざわついている。それでも外よりはましだった。


 窓から野次馬を決め込む者や、スマートフォンをいじる者、入り口の辺りで外に出るべきか否か迷っている者。対応に違いがあっても、皆同じく異様な雰囲気を共有していた。

 だが、なぜか周りが焦っていればいるほど自分は落ち着きを取り戻していくもので。いつの間にかうるさく鳴り響いていた心臓の音が遠くなり、額に滲んでいた汗も乾いていく。


「そうだ、ミコトを探すんだ……」

 館内をうろつく何人もの人とすれ違いながら、ノゾミはその奥の方へと進んでいった。

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