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医者は続けてノゾミの検査結果を伝えた。
出血性のショックで丸一日意識を失い、左腕と肋骨を骨折。更に折れた肋骨が肺に刺さって肺気胸を起こしているとの事で、肺に溜まった空気を外に出すためのチューブが胸から出ていた。頭に包帯が巻かれているのは、頭部からの出血が酷かったため縫合手術をしたからだそうだ。
CTも撮り脳に異常はみられなかったが、念の為明日も撮るらしい。
二、三日で一般病棟に移れるそうで、その後二週間は入院の必要がある、との事だ。
「それでお母様はノゾミ君の入院の手続きや、着替えなどを持って来て頂きたいのですが……」
「あ、はい。分かりました。ノゾミ、アンタの部屋入るけどいいわよね?」
「ん……」
母がわざわざそんな事を聞くのは、2人が訳あって別々に暮らしているからだ。
五年前に両親が離婚し、高校一年生の頃までは二人で暮らしていた。だが二年生に上がった今年の春、母の単身赴任が決まり、ノゾミは叔父が所有するマンションの一室に割安で住まわせてもらっている。
きっと母はノゾミの生活感のない部屋に驚くだろう。お洒落に飾っているという訳ではなく、あまりに殺風景すぎるのだ。必要最低限の家具しか置かず、台所にある食糧はカップ麺ばかり。
明日、着替えを持って来る母の怒号を想像すると今からうんざりする。
打撲した全身が痛んできて、もう溜息をつく気力も無かった。