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その瞬間、涼しげな夜風が二人の頬を撫でた。
昼のべったりとした風よりもはるかに清々しい、澄み切ったものだった。
「俺、そんな風に考えたことないんだけど。それに、もう親にも素直だなんて言われてないぞ」
「それでも、何て言うかな……無意識の内に罪悪感を抱いてるとか? たぶんアンタが嘘をつくのが苦手なのって、そういうことじゃないかな」
ショウの言葉が、心どころか体中に染みた気がした。
まるでノゾミ自身すら把握していなかった心情を、ずばりと言い当てられたような、そんな感じだった。
だが、今のノゾミが素直だなんて、本当にそう言い切れるのだろうか。
「なあショウ、俺はさ、実は……人探しをしていて。それであそこに居たんだ」
「そうだったのね。早く言っちゃえば良かったのに」
「詳しく話せない事情があって。それで猫探しだなんて嘘言ったんだ」
それは、溜めていたものを少しずつ吐き出すような、ゆっくりとした口調だった。
昼間は自分以外にミコトを探せる人は居ないと、そのことしか考えていなかった。でも今は、もしかしたらショウならば、何かヒントになることを言ってくれるのではないかという、淡い期待がある。
ノゾミは緩やかな夜風に乗せるように、滑らかにそれを告げた。




