表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/168

2-6-2

「そ、それは猫を探しに……」

 確か昼間、適当にそんなことを言ったな、と思い出しながら答えた。だがショウも相当勘が良いようだ。

「ねぇ、それって、本当に猫を探してたの?」

「な、なんでそんなこと……」


 思わずぎくっとして声が震えてしまった。これではあからさまに、嘘をついていたことを肯定しているようなものだ。

「だって、猫みたいに気まぐれな動物を探すなら、チラシを作って貼るなり配るなりした方が効率的だわ」

 確かに、ショウの言うとおりだ。もう少し巧妙な嘘をつけば良かったと後悔する。


 もしかしたら自分には人を欺く能力が無いのかもしれない。人には向き不向きがあるというが、どうやら自分は嘘をつくことには向いていないようだ。

 それでは自分は何に向いているのだろうと考えたところで、自嘲気味に心の中で呟いた。

(俺に向いてることなんて無いじゃないか)


「はぁー」

「どうしたの? 溜息なんかついちゃて。そんなに女の子に助けられたのが嫌だった?」

「そうじゃない、助けてくれたことには感謝してる。でも、俺は嘘を付くのが苦手なのかなーって思って」


「別にそれって、悪いことじゃないと思うわ。確かに嘘にも善し悪しがあると思うけど、嘘がつけないって、アンタが素直すぎるってことじゃない?」

「え……」

 突然思ってもみなかったことを言われて驚いてしまった。素直だなんて言われたのは、初めてだったから。

 だがノゾミが言いたかったのは、性格ではなく言葉の問題だ。


「俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……人を騙す口実を作るのが下手っていうか」

「あのね、人に嘘をつくっていうことは、つかれた人の中でアンタの評価が変わるってことなの。分かる?」

 何となく、分かるようで分からなかったので、ノゾミは首をかしげた。するとショウは、まるで親が子供に物語を読み聞かせるかのように、優しい声で言った。


「例えば、アンタがお母さんにテストで百点取ったって言うとするでしょ。本当は八十点なのに。でもその時から、お母さんの中ではずっと百点を取ったアンタが生き続けるってことなの。そういうのに堪えられないんじゃないかな、ノゾミは」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ