2-6-1 救出
「シ、ショウ!? 何でここに居るんだ」
「そんなこと後でいいから、逃げるわよ!」
突然現れたショウは、ノゾミの腕をぐいぐいと引っ張っていく。草履を履いているとは思えない速さで、軽やかに走っていくショウに追いつくので精一杯だった。
「うわ、危なッ」
ショウは道とも言えないような細い路地をするすると通り抜けていくが、急に方向を変えるので壁にぶつかりそうになってしまう。
「え、ここ通るのか?」
「近道なのよ」
いくつ目になるか分からない角を曲がった先にあったのは、ビルとビルの細い隙間だった。体を横にしなければ通れないだろう。
そもそも、どこへ続く近道なのだろうか。それすら聞く余裕も無く、ノゾミは必死にショウについていく。
「あ、ここって……」
ビルの隙間を抜けた先には、昼間ショウと出逢った公園があった。通ってきた所を振り返ると、そこはとても人が出てくるとは思えないような、細くて暗い空間だった。
「結構走らせちゃったわよね。少し休む?」
「ああ、そうする」
二人は昼間と同じベンチに並んで腰掛けた。ノゾミの方は、すっかり上がってしまった息を整えようとするのだが、ショウは全く呼吸が乱れていない。
ショウには余程の体力があるのか、それともノゾミに体力が無いのか。いや、恐らく後者だろう。
痛いくらいに息が苦しいのをなんとか堪えて、ショウに悟られないようにした。
しばらくして、ノゾミの呼吸が整ってからショウは問いかける。
「それで、何であんな所に居たの?」