表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/168

2-5-3

「ミコト、ミコトーーッ!」

 空はもう真っ暗で、街の明かりだけが異様に明るい。こんなに人工の光が溢れていては、星の一つも見ることができない。ノゾミは走りながら空を見上げる。ミコトは空を歩くことができるから、もしかしたらそこにいるのではないかと思ったから。

 ノゾミが求める姿は見えなかったが、あの白くて長い髪の毛は、きっと目印になるはずだ。

 夜は長いので、昼間探さなかった場所を重点的にあたるつもりだった。


「と、なると……こっちか」

 そこは、人通りの多い繁華街。人が多い場所は苦手なので、昼間は避けていたのだ。夜になれば多少は静かになると思っていたが、昼とは違った様子で賑わっている。

「こんな場所に、いるのかな」


 他の人には見えないので、人の多い少ないはミコトにはあまり関係がないのかもしれない。だが、ミコトがどんな所が好きなのか、それすらまだ分からないのだ。手当たり次第に探すしかかないだろう。

 ネオンサインが揺らめくアーケードをくぐり、夜の街へと踏み出す。

 昼間に開いている店の殆どが閉まっていたが、その代わり路地にあるバーやスナックが小さな看板を出していた。


「やっぱり、こんなとこには、いない……よな?」

 どうやらここは居心地が悪いようで、ノゾミの足は自然と速まっていった。

 小走りになりながら大通りを急いでいると、仕事帰りと思われるサラリーマンと何人もすれ違った。家に帰るのか、夜の店に入るのかはノゾミの知ったことではないが。


 そんな人達を見送ってしばらくすると、再びアーケードが見えてきた。だがそれは、この繁華街の出口を表しているものだ。

「はぁ、もう一回戻るか」

 ミコトどころか、少女が一人で出歩いている姿さえ見られなかった。いるのは、無表情でスマートフォンをのぞき込んだり、疲れた顔をしながら歩く大人ばかりだった。


 そんなものを見ていると、こんな大人にはなりたくないと思うのと同時に、そんなに疲れてしまうなら大人になる前に、何もかも終わらせてしまえば楽になるのでは、という考えが浮かんできてしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ