2-4-1 謎の少女
まだ頭をもたげるには早いと思った。こんな自分に用がある人など、居ないはずだ。
きっと、このベンチの先に何かがあるのだろうと予測したノゾミは、その足音が通り過ぎるのを待つことにした。
カラン、コロン、と軽い音を鳴らしながら近づいてくる。だが、それはノゾミの正面でぴたりと止まってしまった。
後頭部に視線を感じる。
たぶん、いや、絶対にノゾミのことを見つめている。
一瞬もしやと思ったが、すぐに違うと分かった。ミコトはいつも裸足で過ごしていたから。
視線に堪えきれなくなって、ノゾミは恐る恐る顔を上げる。
するとそこには、浴衣にツインテールという、一風変わった出で立ちの少女が立っていた。
今日は祭りか花火大会でもあっただろうか?
少女はノゾミの顔を見るなり、初対面の相手に向けているとは思えないような言葉を放った。
「どうしたの? 辛気くさい顔しちゃって」
「――――へ?」
「まるで、世界の終わりを目の当たりにしてるって顔だわ」
「…………?」
自分は、そんなに絶望に染まったような表情をしているのだろうか、と自らの顔に触れてみる。
そんなノゾミを見て、少女はぷっと吹き出した。
「あはは、冗談だよ。辛気くさいってのは本当だけど」
ノゾミは、あまりにも馴れ馴れしく話しかけてくる少女に、見覚えがあったかどうか記憶を辿ってみる。だが該当する者はいなかった。
怪訝な目つきを隠そうともせず、ノゾミは少女をまじまじと見つめる。
ミコトよりは背が高い。だがもちろん、ノゾミよりは低い。ノゾミだって平均くらいの身長はある。
あと気になるところは、派手な桃色の髪をしているということ位だろうか。
まずは、彼女が何者なのか確かめようと、当たり障りのない会話から始めることにした。




