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2-3-4

 まずはどこから探そうか、と辺りを見回してみる。

 だがミコトが行きそうな場所など、皆目見当もつかない。なので、取りあえずこのマンションの周辺を当たって、それからだんだん範囲を広げていくことにした。


 ミコトはノゾミにしかその姿が見えないのだ。見つけられるのはノゾミしかいない。その事実がノゾミの背中を押した。

 初めはゆっくりだった歩みも、心臓の拍動が早くなるのに合わせてどんどん速度を上げていく。

 息を切らしながらも、その足を休めることはなかった。


 しかし、ノゾミも退院したばかりの病み上がりだ。二週間たっぷり寝て過ごした体は、たった五分ばかり走っただけで悲鳴をあげていた。

「はぁ、はぁ……ッ、ヤバ、いかも……」

 更に肺気胸が治ったばかりだったのを思い出した途端、余計に息苦しくなった気がする。

 大きく肩で息をして呼吸を整えようとするが、どうにも上手くいかない。

 回復するのに少し時間がかかりそうだったので、近くにあった公園で休むことにした。


 ズボンのポケットに小銭が入っていたので、公園前の自販機でミネラルウォーターを買った。ちょうど木陰になっていたベンチを見つけ、そこにどさっと腰掛ける。

 ミネラルウォーターをぐびぐびと流し込むと、冷たいものが腹に溜まっていくのが分かった。

 二週間ぶりに外に出た日に思い切り走ったのは間違いだった。それに、空の高い所からじりじりと照りつける太陽も、ノゾミの体力を奪うのに十分な威力を放っている。

 日陰に居るだけマシになったが、それでも暑いことに変わりはない。何より、ギプスの中が蒸れて気持ち悪い。


「あーー、どーしよ……」

 こんな調子では、いつになったらミコトが見つけられるか予想もつかない。

 ノゾミは滴る汗を追うようにして俯いた。地面に落ちる汗が、そこに丸い染みを作る。

 もう少しだけ休んでからまた日向に出て行こうと決めた時、ノゾミの方に向かってくる足音が一つ聞こえた。


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