表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/168

2-3-2

「じゃあノゾミ君、お大事に」

「はい、有り難うございました」

 ノゾミは、見送ってくれた看護師にぺこりと頭を下げた。母も、お世話になりましたと会釈をする。

 長い二日間だった。まるで今までの十二日間と同じくらいの長さだったように感じた。

 何かを待つというのは、こんなにも時が長く感じられるのだな、と痛感する。恐らく、何かが来るのにこれほどまでに痺れを切らしたことは無いだろう。


(そうだ、俺はミコトを探さなくちゃならない。早く死ぬために)

 ミコトが心配だなんて言ってない。これはあくまでも自分のためだ。そう言い聞かせるが、どちらが本当の気持ちなのか、二つが混ざりすぎてもう区別できなくなっていた。


 母が運転する車でノゾミの暮らすマンションへと送ってもらう最中も、そのことで頭が一杯だった。母が何やら小言を言っているが、全く頭に入ってこない。どうせ大した事ではないのだろうから、むしろ好都合だ。


 2週間も外気に触れていなかったノゾミは、忘れてしまていった空気を思い出そうと、少し窓を開けてみる。

 だが、もの凄い勢いで肺に流れ込んでくる風は予想以上に汚くて。夏のコンクリートで暖められた熱気は、車の排気ガスにまみれていて、ノゾミは思わずむせ返ってしまった。

 急いで窓を閉めると、今度は車の冷房の風に包まれた。こちらの方が何倍も心地よい。


 後ろに飛んでいく車窓の外を眺めながら、空ってこんなに眩しかったんだな、とぼんやり思う。まるで闇に取り込まれた自分を、そこから引き剥がされてしまいそうな程に、太陽の輝きが目にしみた。


 ノゾミはそっと目を伏せ、まずどこからミコトを探に行くか思案するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ