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2-3-1 白い影を探して


     ***


「うん、この調子なら予定通り退院できるでしょう」

「そうですか。有り難うございます、先生。ノゾミも、良かったわね」

「ん……」

 その日、ノゾミは母と一緒に医師の診察を受けていた。

 予定通り、というのは二日後だ。明後日にはノゾミはこの病院からいなくなる。


「どうしたのノゾミ? 退院、嬉しくないの?」

「いや、嬉しいよ。嬉しいに決まってる」

「じゃあもっと嬉しそうにしたらどうなのよ。相変わらずポーカーフェイスなんだから」

 ノゾミは、もう最後に笑ったのがいつなのか分からなくなっていた。


 ミコトと初めて出逢ったあの日、死ねない事で悩むなんて可笑しな話だ、と思うと自然と口角が上がってきたが、あれは嬉しさではなく自分に対する同情のようなものだ。自分に同情する、という表現が正しいのか分からないが、その言い方しか思いつかないのだ。


 ノゾミには、自分に起きている事すら他人事のように思えてしまう。これだから生きている意味を見失ってしまったのだろう。

(もう、(ゆる)してくれよ……)

 これから先、自分の年齢すら忘れてしまうほど生きていかねばならないのだろうか。

 それは嫌だ。その為にも早く退院して、自分を殺せる人達を探すのだ。


 病室に戻ったノゾミは、荷物をまとめ始めた。荷造りをするにはまだ早いと分かっていたが、先を焦る気持ちは止められなかった。

 まずは母が持ってきた夏休みの課題からしまおうと、ベッドテーブルに積んであったテキストやノートを鞄に詰める。課題図書を手に取った時、はたとノゾミの手が止まった。


「アイツ、俺が退院したら俺の居場所分からないよな……」

 ノゾミを殺す手伝いをすると言ったのはミコトだ。それなのに、突然姿を消してしまった。

 その原因はノゾミにあるのかもしれないが、さすがに何も言わずにその役目を放り出すような子にも見えない。

「仕方ない、退院したら……」

 そう、全てはこの病院を出てから始まるのだ。


「まず、ミコトを探しにいくか」



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