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2-2-3

「ったく、どこまで行ったんだミコトは」

 今夜は帰らないつもりなのか、それともどこか休める場所を見つけたのか。

 後者ならば何か言いに来ても良いのではないだろうか。ということは――


「あー、考えんのやめよ」

 そもそも人と関わりを持とうとしないノゾミにとって、出逢って三日の者と分かり合おうとすること自体、身に余ることだったのかもしれない。

 そう自分に言い聞かせることしかできなかった。


「今日はもう寝るか」

 そう独りごちるが、消灯時間まではまだ少し時間がある。

 心のどこかがもやもやしていて、とても宿題に集中できるような状態ではなかった。これではただの不貞寝だが、起きていてもこの不快さが収まるわけではない。こういう時は寝てしまうのが一番だ。

 それでも何かに期待していたのだろう。ノゾミは一応窓を開けておくことにした。


(もしアイツが帰ってきたら、ここから入るかも。いや、別にちょっとぐらい帰ってこなくても心配とかしないし、アイツなら何とかできるだろ。俺はまだ病院から出られないし、今夜は暑いし)

 まるで自分に言い訳をしているようだった。この行動に何か理由を付けておきたくて。でもそれは決して“ミコトが帰ってきた時のため”ではない。そう言ってしまったら、自分に負けるような気がしてしまったのだ。他人と関わらない、というポリシーを守り続ける自分に。


 早々に寝支度を整えたノゾミは、布団に潜り込んで固く目を閉じた。

 明日の朝には何かが変わっているかもしれない、と思う反面、どうせそんな期待は無駄だと諦めている自分がいる。だが諦めの方がノゾミには似合っている。大きすぎる期待は、外れた時のショックも大きい。そんな思いは、もうこりごりだった。





 翌朝、まぶたの裏を焼くような朝日に起こされたノゾミは、ゆっくりと体を起こして部屋を見渡した。

 開け放たれた窓から吹き込む風に、閉めていなかったカーテンがばさばさと打たれている。

 だがそこに、ノゾミが求めていた姿は無い。

 力なくうなだれたノゾミは、漏れる息と同化してしまいそうな程小さな声を上げたのだった。 


「ほら、やっぱりな……」


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