表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/168

2-2-2

「あー、暇だ……」

 入院してから何度目になるか分からない呟きを漏らした。暇だと口にしたところで暇でなくなる訳ではないのだが。むしろ何もやる気が起きないのだから、暇で良いのだ。


 しばらくぼんやりとしていたら、窓の外が薄暗くなってきた。

 ふとミコトのことが気になって窓の向こうへと視線を投げるが、高層ビルがひっそりと立ち並んでいるだけだった。

「宿題でもやるか」

 彼女がいたら恐らくそう言うだろうと思い、少しだけ夏休みの課題をやることにした。

 だがそのためには、ベッドテーブルに置いてある夕食をのせたトレーが邪魔だ。ノゾミは重い足を引きずってトレーを下げに行った。


 数学のテキストとノートを開いてそれを眺めるが、手を動かさずして解けるような問題ではない。ノゾミは幾度もため息を吐きつつ、無傷の右手でペンを握る。

 そういえば、こうしてペンを持つのは事故が起きて以来初めてだ。やる事がないと、どこまでもだらけてしまうのはノゾミの性分なのだが、時間が無駄だと思ったことはない。必要最小限の事しかやりたくないのだから。

 そもそもこんな勉強何の役に立つんだ、と心の中で文句を言いながら、ノゾミは問題を進めていった。


「クソ、書きにくいな」

 利き手ではないといえ、片手が使えないのは意外と不便だ。書くたびに紙が少しずつずれてしまうし、消しゴムで消す時など、ノートがくしゃくしゃになってしまう。

「ミコト、ちょっと抑えてて、くれないか……」

 途中で彼女はまだ帰ってきていないのだと思い出し、その言葉は尻窄まりになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ