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「そうですね、怪我が治る速さは普通の人と変わりません。治癒能力が上がるのではなくて、致命傷を負っても、心肺が停止することはなくなるって感じです」
成る程。よく漫画やアニメで見るような、刺されても傷口がすぐに塞がる、というものではないということか。
「だったら、もし俺がこの心臓をナイフで突き刺したら、どうなる?」
「その場合は、失血死寸前のところで出血が止まるでしょう。とにかく、どんなにぐちゃぐちゃにされても、ノゾ君は死にませんよ」
ぐちゃぐちゃにされるのはごめんだが、そこまでされても死なないとは。
いつも頭の片隅で、もしかして手首を掻き切れば死ねるのでは、と考えてしまうのだ。
だが、それもミコトにあっさりと否定され、いよいよ希望を捨てなければならなくなってきた。ノゾミが大きな溜息を吐くと、ミコトが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「ノゾ君、元気無いんですか? やっぱり僕のせいで.……」
「いや、そんな事はない。ミコトはただ人助けをしただけだろ」
「でも……」
ミコトはノゾミと違って表情が豊かだ。だからこうして眉尻が下がっているのを見ると、明らかに落ち込んでいるのだと分かる。
しかしノゾミには、人を励ます方法が分からない。
このままではミコトをますます傷つけてしまうかもしれない。そう思ったノゾミは、取り敢えずミコトに気分転換がてら外に出てもらうことにした。
「ミコト、俺はお前に対して怒ってる訳じゃない。心配するな。俺の事はいいから、外の空気でも吸ってきたらどうだ? 今日は天気が良いからな」