2/168
1-1-1 病院にて
目を覚ましたノゾミの眼にまず映ったのは、どこかの天井だった。
口元に違和感がある。何処からかピッピッ……という、何かを数えるような機械音が聞こえる。
体がピクリとも動かない。
今、どんな状況なのだろうかと辺りを見回す。眼だけを動かし、ゆっくりとその視野を広げていく。
まず眼に入ったのは、顔の約半分を覆う酸素マスクだった。口元の違和感の原因はこれだろう。左腕の肘の裏から、細いチューブが延びている。きっと点滴だ。
ベッドの周りには見慣れぬ機械が並んでいて、その中の1つに、さっきの機械音を出すものがあった。それが自身の拍動を数えているのだと気付くにはあまり時間を要さなかった。拍動の度に機械の画面に映る真っ直ぐだった直線が、尖った山形になる。こればかりはドラマで見た事があったからだ。
だが、刻まれる音は本当に自分のものかと思うほどゆっくりで。
ノゾミは酸素マスクの下から小さく溜息をついた。
「ここ、病院か……」