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2-1-2

「あ、ノゾ君、これは何と読むんですか?」

 しばらく本を読み進めていると、またしてもミコトが字の読み方を問うてきた。

 その指は〝雪〟を指している。

「これは〝ゆき〟って読むんだ」


 ミコトは新しいことが学べて嬉しいのか、少し気分が高揚しているように見えた。

 だが、こんな風に字を教えていると、まるでーー

「『妹ができたみたい』って、思ってます?」

「えっ……?」

 心の中が読み取られたのかと思い、一瞬思考が停止してしまった。


「な、そんな訳ないし。それに、ミコトは見た目が妹でも、歳がとんでもなく離れてるだろ」

「うふふ、それもそうですね」

 ミコトは楽しそうに顔を綻ばせた。

 そして再び、ノゾミに質問を投げかける。

「ノゾ君には、ご兄弟はいるんですか?」

「…………」

 その質問には答えたくなかった。

 だが、ミコトの無垢な瞳に背中を押され、重い口を開く。


「弟がいたけど、父さんと母さんが離婚した時に父さんの方に行ったから、もう他人だ」

 それを聞いた途端、ミコトはしゅんと肩をすぼめた。

「す、済みません。ノゾ君の事情も知らずに」

「別にいいけど、この話はまた今度な」

 今はまだ、ミコトに話すようなことではない。ノゾミが死ぬためには必要ない情報だ。


 ミコトはその後一言も喋らずに、ノゾミが本を読むのを見守っていた。

 余計な事を言わないようにしているのだということが、手に取るように分かった。だが、あまりにもこちらに視線を寄せてくるので、ノゾミは耐えきれずに何か話題がないかと頭を回転させる。

「な、なあミコト。俺は死なない体になったんだよな」

「はい」

「じゃあ、この怪我も速攻で治ったりしないのか?」

 ノゾミは左腕に巻かれたギプスを見つめて言った。

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