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「はい。でも、一つずつ殺してはいけません。例えば体だけを殺したら、ノゾ君は幽霊のようになってしまいます」
「他はどうなる?」
「魂を殺せば貴方はただの抜け殻に。精神とはつまり心のことなので、これを殺せば感情の無い人に。そして感覚を殺せば、視覚や聴覚、痛覚など全ての感覚が失われます」
つまり、四つを同時に殺す必要がある、ということだ。
だが問題がひとつ。
「どうやってそれを殺すんだ?」
「探すんです。体、魂、精神、感覚を殺せる人を」
「四人、集めろってことだな」
「そうです。死なない体質になってしまった人を殺すには、この方法しかありません」
「……分かった」
こんな事になるのなら、もっと早く死んでおけば良かった。
この世界に、もっと早く別れを告げていれば良かった。
だがそんな事を思うと、なぜか笑えてきてしまう。普通ならもっと長く生きたい、もっとこの世界に留まっていたいと思うのだろう。
それとは逆の事で悩む羽目になるとは。
「――ふ、ふふっ」
「ノゾ君?」
「上等だ。さっさとその四人を探して死んでやる」
「で、でも彼らはどこにいるかも分からないんですよ。それに皆僕と似たような存在です。見つかるのにどの位時間がかかるか、見当もつきませんよ」
それでも、この命が終わらせられるなら何でもするつもりだった。
「構わない。今日から俺は、死ぬために生きる」
そう言って虚空を睨むノゾミの眼には、〝生〟を堪能しようという光ではなく、〝死〟への渇望の闇が灯っていた。
「……これは僕の責任です。僕にも、ノゾ君のお手伝いをさせて下さい」
「ああ、それはこっちから頼みたいくらいだ」
命をつかさどる少女に殺しの手伝いをしてもらうのも、おかしな話だ。
それでも、ノゾミにはもう道が残されていないのだから――
「宜しく頼む。ミコト」
「はいっ」
ミコトはようやく笑顔を取り戻した。
「ノゾ君の力になれるのなら、何でもしますよ」
 




