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5-3-4

 さあ、どうするムクロ。言い逃れはできないが。

「あれは……私の双子の兄でございます」

(いやいやいや、流石(さすが)に嘘だってバレるだろ)

「――へー、そんな偶然あるんだね」

(って、信じるのかよ!)


 キオが意外にもあっさりと信じ込んでしまったので、この場は難なく収まった。弟は素直だが人を疑うことを知らないのだ。これが吉と出ることもあれば、凶と出ることもある。

「あ、そうだ。おれは何でここに居るの?ノゾ兄の家?」

「ああ、俺の部屋だ。……えっと……俺の家に来たいって言ったの覚えてないか?」

「そうだっけ」


 弟を(だま)すのは心苦しいが、彼を巻き込みたくはない。

「サユキさんはどうしたの」

「…………さぁ、どうしたんだろうな」

「何それ。サユキさんと一緒に居たんじゃないの?おれ何にも覚えてないんだけど……」

「仕方ないよ、お前あの人ん()で眠っちまったんだから。疲れてたんだろ」

「え〜。おれ、そんな事するかなぁ……」


 昔から他人の迷惑になるようなことはしなかった弟は、なかなかノゾミの言葉を信じない。

「まぁまぁ弟クン。そんな細かいことは気にしなくて良いんじゃないかな」

 そこへ口を挟んだショウが、彼女にしては珍しいことを言う。ショウならそんな言葉ではなく、理論で相手を納得させるものだと思っていた。


「そうだね。過ぎたことはどうしようもないか」

(やけに聞き分けがいいな……まぁ、そっちの方が助かるけど)

「はいっ、この話はお終いね。みんなお腹空いたんじゃない?朝ごはん作ってあるわよ」

「あ、ありがと……って、は!?」

「勝手に台所使わせてもらったわ」

「それは別に構わないけど」


 お前料理出来たのか?

 そんな疑問と、彼女の思いもよらない優しさに戸惑ってしまう。

「なに?アンタ達がずっと寝てるから暇潰しに作っただけよ。勘違いしないでよね」

「は、はあ……」

「分かったなら運ぶの手伝ってちょうだい」

 フン、と鼻を鳴らして台所へ向かったショウの、ピンと伸びた背中を縋るように追いかけた。

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