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5-3-3

「そうだ。あいつにキオを殺されかけたんだ、許す訳にはいかない」

「アンタも十分被害者なんだけどね……」

「ですが、(のち)に私に“感覚”を譲っていただくノゾミ様に手を出すとは、見過ごす訳にはいきませんね。それこそ奴の眼球を抉り出してやりたいものでございます」

「……アンタが言うと洒落にならないから怖いのよ」


 穏やかな彼の口からとんでもない台詞が飛び出してきて耳を疑った。彼が怒ると怖い、という話は嘘ではないようだ。

「いや、頼もしいよ。ムクロもあいつへの復讐に手を貸してくれるってことだろ」

「もちろんでございます」

「ま、待ってください!あんなに危険な相手、いくらムクロでも勝てるか分かりませんよ」


 ミコトはサユキとコユキの残酷さ、冷徹さ、そして異常さを知っている。だからこその反論なのだ。

 ノゾミも散々してやられたから、彼の恐ろしさは身に染みて感じている。それでも反撃の狼煙(のろし)を上げるのは、自分だけでなく弟をも傷つけ、さらにミコトを罵った彼を放っておけないからだ。


「どうせ死ぬんだ、最期に敵に一泡(ひとあわ)吹かせてやるのも悪くないだろ」

 ノゾミが明後日の方(窓の外)へ目を(すが)めたのとほぼ同時に、ソファで寝ていた弟がもぞもぞと身を(よじ)る。

 やっと目を覚ましたのかと思って彼の顔にノゾミも顔を近づけると、キオの瞼がひくりと動いた。


「…………ん……」

「キオ、起きたか?」

「あれ……ノゾにぃ……?」

 ぼんやりとした目でノゾミを見つめ、たまに部屋へと視線を向ける。起きたら見知らぬ場所にいるのだ、無理もない。


「ここどこ?何でおれの家じゃないの? ――ていうか、あの人たち誰?」

「あー……話すと長くなるんだけど……」

 というより、どこから話せば良いのだろう。キオはサユキの正体を知らない訳だし、知っても相当のショックを受けるだろう。仲良くしてきたお隣さんが殺人鬼だったなんて。


「私共はノゾミ様の友人でございます。ですよね? ショウ様」

「え? ――あ、ああそうそう! アタシ達はただの友達よ」

 ムクロが機転を利かせてフォローを入れてくれたことに胸をなで下ろす。だが、ショウはともかくムクロのように明らかに年上の者が友達だというのは厳しいのではないだろうか。

「ノゾ兄友達いたんだ。良かったぁ」


 ノゾミの心配を他所(よそ)に、キオは兄に知り合いがいるくらいで安心している。友達の一人もいないと思われていたのならそれはそれで失礼だが、生憎(あいにく)彼ら以上に接点を持った人物はほんの数人しか居ない。

「あ、なんか見覚えがあると思ったら、お兄さん、父さんの葬儀に居たよね」

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