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5-3-2

 

「それで、キオは……? あいつはどこにいるんだ」

 まさかとは思うが、助かっているなんてことはないだろう。あんなにひどい出血で、ノゾミが必死に叫んでも意識が戻らなかったのだから。今頃病院にいてもおかしくない。

「そのことですけど、弟さんは……」


 はっきり言ってくれ。駄目だったならそうと言って、絶望のどん底に突き落としてほしい。期待が膨らみすぎない内に、早く。

「弟さんは……」

「ああ。キオは?」

「――隣のお部屋に……」

「リ、リビングに居るのか!?」


 ノゾミは床を蹴り出して引き戸の取っ手に手をかけた。弟がどんな姿だろうと受け容れる覚悟もままならず、彼に会いたい一心で自室を飛び出した。

「キオ!!」

 だが、そこに居たのは二人の人物。――ショウとムクロだった。


「なんでお前らがいるんだ、キオはどこだよ!?」

「ちょっと何よその言い草は!せっかく助けてあげたのに第一声がそれって酷いんじゃないの」

「落ち着いて下さいショウ様。ノゾミ様もあんな事があって混乱しておられるのです、ご令弟(れいてい)を心配なさるのも当然では?」

「アンタは甘いのよ、ムクロ!」

「ふ、二人とも静かにして下さい」


 ミコトが声を潜めて言うと、二人はハッとしたように口を噤んだ。

「大丈夫ですよノゾ君。キオさんはちゃんとここに居ます」

 ノゾミの前に回ったミコトが指したのはソファだった。こちらに背を向けているソファの正面へ行くと、キオはそこに横たえられていた。

 背もたれの死角になっていただけだけで取り乱してしまうなんて。


「……助かったのか?」

「はい、私が傷口を塞いでおきました」

「ありがとな」

「お礼には及びません。今はまだ眠っておられますが、じきに目を覚ましますよ」

 ムクロの言葉にほっとして、キオが眠るソファのひじ掛けに腰を下ろした。少し顔色が悪いが、規則的な寝息を立てて静かに眠っているのでひとまずは安心だ。


「もう、何よアタシだって頑張ったんだからね!」

「ああ分かってる。ショウにも世話をかけたな」

 彼女は満足そうに頷くと、ソファの向かい側に正座をし、居住まいを正した。

「話はミコトから聞いたわ。今回のことはあの殺人鬼が全部悪かったんでしょ?」

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