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5-3-1 生還

 ――ここは、どこだろう。

 あれからひどく長い時間が経ったような気がするし、まだ数分しか過ぎていない気もする。

 ただこれだけは言える。あの血生臭い部屋から抜け出すことができたということだ。


「あ、起きましたか?」

 目を開けると、そこには白髪の少女が。

「ここは……俺の部屋?」

「はい。ムクロが車でここまで運んでくれたんですよ」

「ふーん………………」


 そうだ、昨日殺人鬼に拉致されて、弟を殺されて――

「キオ、キオは!? あいつはどこにいるんだ!」

 薄手のタオルケットを跳ね上げ、ベッドから降りようとしたノゾミはある異変に気が付いた。

「あ、あれ?足が元に戻ってる――舌も」


 斧で切断されたはずの膝から下が、縫い合わせた痕もなく綺麗にくっついていた。力も入るし、ちゃんと立てる。接合されたというよりは、新たに足が生えてきたみたいだ。

 咬みちぎられた舌も同じで、さらに殴られた腹は痛まない。まるで昨日の朝まで時間が巻き戻ったかのように、何もかも元通りだった。


「どうなってんだ……?」

「落ち着いて下さい、ちゃんと説明しますから」

「あ、ああ……」

 ベッドに腰掛けたミコトは事の全てを理解した上で、寝巻きのままで静かに慌てるノゾミを(さと)す。

(って俺、いつ着替えて――)

 ふと気が付いたのだが、これはむしろ聞かない方が良いかもしれない。いつ誰が血だらけの服を脱がしたのかは、彼女の表情からも読み取れなかったし、恥ずかしくて知りたくはなかったから。


「で、俺はあの後どうなったんだ?」

「あの人に逃げられて、ノゾ君が気を失ってしまった後、ムクロが怪我を全て治してくれたんですよ」

「そっか……」

 彼は治癒能力を有していた。それを使えば、切断された足を元に戻すなど造作もないことなのだろう。

「よくあのマンションが分かったな。どうやって調べたんだ?」

「調べたのではありません、僕の直感ですよ」


 そんな、クジの当たりを引いたみたいにさらっと言われても。

 大体ここからキオのマンションまでは電車で三十分程度。半径何十キロもある範囲の中からマンションの一室を見つけ出すなんて、感覚でできることではない。

「ふふっ、冗談です。神様が導いてくれた――とでも言えれば素敵ですけどね」

「な、なんだ……」


 冗談を言うなど、彼女にしては珍しい。ノゾミのことを気遣っているのだろうか。

「ノゾ君があの人と一緒に居る時、また嫌な気配がしたんです。それで急いでショウとムクロを呼んで、彼に車を出してもらいました。もの凄い勢いで飛ばすので、車から放り出されるんじゃないかと思ってしまいました」

「そうだったんだな」

 事故を起こさなかったのは何よりだが、自分がそこまで周りの人を心配させていたのかと思うと申し訳なくなる。

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