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5-2-11

 逃げられたか。一体どんな手を使ったのだろう。こんなところから飛び降りて無事でいられる保証はない。きっと共謀者が下にいて――

(だとしたら、あんなのがまだいるかもしれないってことかよ……)


 それが一人であるとは限らない。二人か三人か。そもそも共謀者なんていないのかもしれないが、彼の窮地を救ってくれる人が必要な今、第三者の存在を疑うのが自然だろう。

(……だめだ、傷が痛んで…もう頭が働かない……)

 そこまで考えて、ノゾミの体はついに限界を迎えた。


「ノゾ君、ノゾ君!大丈夫ですか、目を開けて下さい!」

 ――何だ、視界が暗いと思ってたら、俺目ぇ瞑ってたのか……

(俺は、平気だ)

 ――あれ、言えてない……。口が全然動かねー……

 浅い息を繰り返すだけの屍になってしまったようだ。ノゾミの体は指一本すら満足に動かせず、ぎりぎりまで血を失ったせいで真っ青だった。


「待ってて下さい、今ムクロとショウを呼んできます!」

 ミコトがパタパタと玄関に向かい、扉の鍵を開ける。ガチャリという音を確認してから、ノゾミはようやく意識を手放す準備をした。

 今すぐにでも飛んで行きそうな自我を、引き留めるものがなくなったのだ。助けが来たという安堵が、何とも言えない脱力感を生み出している。


 体が、精神が、悲鳴をあげていた。


 床に耳を付けているせいで玄関での物音がここまで伝わってきて。それは、もう大丈夫だと言われている気がして、心なしか嬉しかった。

 ノゾミは三人分に増えた足音を感じながら、床に沈んでいきそうな意識を追うのを諦めた。

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