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「実は僕、この力を早く使い切りたいと思っていたんです。世界には助けられない命が沢山ある。その中から三つだけを選ぶなんて……っ」
その言葉の中に、彼女のこれまでの苦悩を垣間見た気がした。きっと今まで悩み悩んで、数え切れない程多くの命を見送ってきたのだろう。
「最初から一人も助けなければ良いって、言われるかもしれませんけど、僕にはただ見過ごすなんてこと、出来なかったんです」
それはきっと、彼女が優しすぎる証拠だ。
ノゾミとは真逆の性格をしているのだろう。すぐに諦めて、逃げて、言い訳ばかりのノゾミとは。
「でも、貴方には生きることへの望みも拒絶も感じられなかった。全くの無の状態でした。そんな人を死なせてはいけないと、思ったんです」
「俺が? 生きることへの拒絶も無い?」
そんなことはあるはずがない。
だって、こんなにも――
「死にたいって思ってるのに?」
「ノゾ君は、何事にも興味が持てないんじゃないですか?」
「そ、そうだけど」
「そのせいで、本当に死ぬとなった時に、自分が生きるも死ぬもどうだって良かったのではないでしょうか。それなら、生きることに興味を持ってほしかったんです」
少女の気持ちは受け取った。
だがノゾミの心は、まだ彼女の思いを素直に受け取れるほど開かれてはいない。
「悪いが、それは出来ないだろうな」
「ええ、僕はノゾ君の意見を尊重します。貴方の命を終わらせる方法をお教えしましょう」
「! できるのか?」
「はい。ですが、それがいつになるかは分かりません。果てしなく長い時間がかかるかもしれません」
もとより永遠のような時間を生きるはずだったのだ。死ねるなら、その方法を知りたいに決まっている。
「どんな方法なんだ」
「……人は、体、魂、精神、感覚の四つから構成されています。貴方が完全に死ぬには、それぞれを殺す必要があります」
「それぞれを、殺す?」