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5-2-8

残酷描写あります。

「ほら、ちゃんと見ててよ……(ボク)が君を喰べるところ」

 血溜まりの中からノゾミの足を取り上げると、サユキはその断面を見せつけてきた。

 彼はもう、どこを狙えば上手く切り取れるか心得ているようだ。まるで医療画像のように、綺麗な切り口になっている。


「さっきも思ったけど、あんまり血が出ないんだね。死なないっていうからには当然か」

 その間もノゾミは絶えず嗚咽を漏らしていた。いつの間にか溢れていた涙が床を濡らす。

「それじゃあ、いただきます――」


 サユキの歯が、ノゾミのものを食い千切った。

 口の周りを血でべっとりと汚しながら肉を頬張る。彼は久し振りのご馳走を目の当たりにした少年のように、一心不乱に喰べ続けた。


「ノゾミ君、あんまり筋肉付いてないね。もっと運動した方が良いんじゃない?このままでも十分美味しいけど、きっともっと美味しくなれるよ」

「は、ぁ……知…ぅか、よ…」


 痛みのあまり肩で息をしながら、勝手なことを言うサユキにやっとの思いで歯向かうが、果たして彼に響いているのかは分からない。気が付けばふくらはぎの辺りまで喰われていて、ノゾミの足は見るも無惨な姿になっていた。

 ノゾミの荒い息と(うめ)き声、そしてサユキの咀嚼の音が反響する異様な空間に、もう人間は居ないようにすら思えた。


「あぁ、幸せだなぁ……最高の肉が、特別な、死なない体がここにあるんだ……」

 サユキはうわごとのように言って、切り口を愛おしそうにそっと撫でる。だがそれはノゾミに耐え難い苦痛をもたらした。

「あっ、あァあ…ん、…っぐ、ぁあぁああ!」


(――俺、いつから間違えたんだろ……なんで、こんな……)

 そもそも、自分がこんなに痛い思いをしなければならない理由は無い。傷付くのが嫌だから何事からも逃げてきたのに、死にそうなほど痛めつけられることになるなんて。

「ぃや…も、嫌だ……ッ」

 血と涙と唾液でぐしゃぐしゃになった顔を歪め、全てを投げ出す覚悟で四肢の力を抜く。


「……して……こ、ぉして……」

「なぁに?ちゃんと言ってごらん」

「……殺してくれ……。もぉ、苦しいのは嫌なんだ……」

「へぇ」


 肩眉を上げてにやりと笑うサユキの眼が揺らぐ。コユキがどこかで聞いているのだろう。

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