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5-2-7

残酷描写あります。

「あ……ぁ、……」

 全身が、恐怖に包まれていく。

 今までに感じていたものは、恐れよりも怒りや困惑の方が大きかった。それが全て恐慌に置き換わる。


「遂にこの日が来たんだ。(ボク)ね、こう見えて人を殺すのはちょっと怖いから、いつもはコユキが殺した人を捌いてるんだ。コユキは殺すのが好きなだけだから」

「ぃ、嫌…ぁ……やめ…っ」

「ノゾミ君、死なないんだよね。ならコユキがいなくても大丈夫」

「や、あ……()ん、ぁ…」

「生きた人の肉を喰べるなんて初めてだよ。きっと、すごく美味しよね。心配しないで、(ボク)が綺麗に喰べてあげるから」


 回らない呂律でみっともなく喘ぎながら、サユキから遠ざかろうとして必死に足を動かして後ずさる。だが思うようにいかなくて、虚しく床を蹴るだけに終わってしまった。(おのの)く体は言うことを聞いてくれない。


「はぁ……、あはっ、嬉しいなぁ……。ノゾミ君の肉が喰べられる……」

 幸せそうなため息をつきながら、サユキは斧を(もてあそ)ぶ。あんなもので、一体どこを斬られるのだろう。

 そう思った矢先、左の足首に荷重がかかった。

 サユキが自身の足でノゾミのそこを押さえつけていたのだ。


「危ないから暴れないでね」

 暴れないでいられるか。抵抗しないと、最後まで足掻(あが)かないと、この化け物に喰われてしまう。

「くッ」

 七分丈のチノパンを膝上まで捲り上げられ、サユキがやろうとしていることをはっきりと自覚する。

「待っ、……」

 だが無慈悲にもサユキの斧は振り上げられ――


「せめて良い声で()いてね」

「――ッ!」



 その一瞬だけは、辺りが静寂に包まれたようだった。

 膝下(しっか)に刃が食い込み、皮膚を、肉を、筋を、切断していく。

 斧が床に達して初めて、ノゾミの悲鳴が声になった。


「ぁがぁああぁあ゛あ゛ぁ゛あぁあ!!!」

 もうとっくに枯れたと思っていた喉から絞り出されたそれは、痛みに耐えるというよりも、自らの不遇な境遇を嘆いているように聞こえた。

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