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5-2-3

「――コ、コユキ……?」

「そ。お前が呆れるほど鈍いから、こっちから正体明かしてやったんだ。感謝しな」

(もう、何なんだよ。訳わかんねー……)

 そこら中が痛んで、冷静に物事を考えられない。


 ただ、自分を見下ろしているコユキの瞳が、サユキのものとは違って炎のように(あか)くて。それは燃えるような殺気を(たた)えていた。

「お前と初めて逢ったのは(オレ)だ。その時、あのクソアマの気配がしたから出直したってのに、アイツ(オレ)たちのこと覚えてねーんだもんな」

「アイツって、ミコトのことか?」


「他に誰がいるって言うんだ。お前らほんとに馬鹿なんじゃねェの」

 コユキが何に対して怒っているのか分からないが、ミコトは彼のことは知らないと言っていた。ノゾミもそれを信じているから、彼に何を言われてもピンと来ない。

「あんた、何者なんだよ……」

「さぁね」


 肩を竦めてノゾミの正面にしゃがんだコユキの眼は、既に碧く穏やかなものになっていた。

(ボク)が何者かなんて、今の君には『弟を殺した奴』で十分なんじゃないかな」

「テ、メエ……」

 ぎりぎりと歯を食いしばり、今にも掴みかかりそうになるのを理性で抑えた。こんなに感情が昂ぶっているのに、無意識の内に自制が出来ているようだ。


 だがそれも、あっけなく崩れ去る。

「それにしてもキオ君って美味しそうだよね。最初はノゾミ君に目を付けてたのに、兄弟揃ってこんなに良い素質を持ってるなんて」

「はあ?」


「あの日、図書館の前で逢えたのは本当にただの偶然。(ボク)はその前からここに住んでたし、キオ君とも知り合いだった。……まあ、当然キオ君は(ボク)の正体なんて知らないけどね」

「お前、キオまで巻き込んで俺たちをどうしたいんだ」

 ノゾミが尋ねるとサユキは立ち上がり、今度はキオの上に覆い被さった。

 そして、未だ血が溢れ出しているキオの首元の傷に口を近付ける。


「それはもちろん、喰べたいんだよ」


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