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「な、んで……」
ノゾミは震える声で、なんとか詰まりそうな息を絞り出す。
「俺は、生きてることが嫌になったんだ。やりたいことも、好きなことも見つからないから」
「はい……」
「でも、俺は情けなくて、自分を殺す勇気が無くて。だからこの事故は俺にとって好都合だったんだ」
「はい……」
「俺なんか助けないで、もっと生きる価値のある奴を助ければ良かったじゃないか!」
ノゾミは吐き捨てるように言った。
こんな命は、ゴミ箱にでも放っていきたい。そんな思いがノゾミの中から湧き上がってきた。
それでも彼女は食い下がる。
「そんな、自分のことを生きる価値が無いみたいに言ったら駄目ですよ」
「俺に生きてる価値なんて無いんだよ! 誰にも必要とされてない、何のために生きてるかも分かんない。だったらもう死んだ方が良いに決まってんだろ!」
気が付いたら、ノゾミは自分でも驚く程の大声を出していた。こんなに感情を露わにしたのは久し振りだ。
急に叫んだノゾミの声に、彼女はビクッと体を震わせた。
そしてその一言に、少女はついに堪えていたものを溢れ出させた。
「ごめ、なさい…ぼ、僕は、貴方がまだ生きるに値すると思ったから、どうしても助けたくて……でも、僕の眼は間違っていたんですね」
「あ――」
少女は大粒の涙を零し、それはベッドのシーツにぽつぽつと丸い染みを作る。
その涙にハッとしたノゾミは、勢いに任せて酷いことを口走ってしまったと後悔した。
(何やってんだ俺、逢って数分の女の子泣かせるとか)
本来なら彼女が責められることは何一つ無いはずだ。それを、彼女の厚意を、自分のわがままで無下にしてしまうとは。
「ッ、ごめん。少し言い過ぎた」
「いえ、謝るのは僕の方です。この件に関しては、責任は僕にあります」
そんなことは無い。そう言おうとしたノゾミを遮り、少女は自らの胸の内を語り出した。