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1-3-3

「な、んで……」

 ノゾミは震える声で、なんとか詰まりそうな息を絞り出す。

「俺は、生きてることが嫌になったんだ。やりたいことも、好きなことも見つからないから」

「はい……」

「でも、俺は情けなくて、自分を殺す勇気が無くて。だからこの事故は俺にとって好都合だったんだ」

「はい……」

「俺なんか助けないで、もっと生きる価値のある奴を助ければ良かったじゃないか!」

 ノゾミは吐き捨てるように言った。

 こんな命は、ゴミ箱にでも放っていきたい。そんな思いがノゾミの中から湧き上がってきた。


 それでも彼女は食い下がる。

「そんな、自分のことを生きる価値が無いみたいに言ったら駄目ですよ」

「俺に生きてる価値なんて無いんだよ! 誰にも必要とされてない、何のために生きてるかも分かんない。だったらもう死んだ方が良いに決まってんだろ!」

 気が付いたら、ノゾミは自分でも驚く程の大声を出していた。こんなに感情を露わにしたのは久し振りだ。

 急に叫んだノゾミの声に、彼女はビクッと体を震わせた。


 そしてその一言に、少女はついに堪えていたものを溢れ出させた。

「ごめ、なさい…ぼ、僕は、貴方がまだ生きるに値すると思ったから、どうしても助けたくて……でも、僕の眼は間違っていたんですね」

「あ――」

 少女は大粒の涙を零し、それはベッドのシーツにぽつぽつと丸い染みを作る。

 その涙にハッとしたノゾミは、勢いに任せて酷いことを口走ってしまったと後悔した。

(何やってんだ俺、逢って数分の女の子泣かせるとか)


 本来なら彼女が責められることは何一つ無いはずだ。それを、彼女の厚意を、自分のわがままで無下にしてしまうとは。

「ッ、ごめん。少し言い過ぎた」

「いえ、謝るのは僕の方です。この件に関しては、責任は僕にあります」

 そんなことは無い。そう言おうとしたノゾミを遮り、少女は自らの胸の内を語り出した。

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