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5-1-1 潜伏




「へー、こんなとこに住んでたんだ」

「でもノゾ兄は今ひとり暮らしなんでしょ? 羨ましいよ」

 翌日の昼間、父の実家からそのままキオ達が住んでいたマンションへと来ていた。中に入ってみると、ダイニングキッチンの他に部屋が二つの、一般的な間取り。男の二人暮らしだったせいか、あまり片付いてはいなかった。


「引っ越し業者には頼まないのか?」

「叔父さんが、軽トラ持ってるから任せろって言ってくれて。おれ達は頑張ってこの部屋を綺麗にしなきゃいけないんだ」

「それで叔父さんはいつ来るんだ?」

「三日後だよ」

「……間に合うのか、これ……」


 汚い、とまではいかないが、それなりに散らかっている。洗濯物は溜っているし、ダイニングテーブルには数日分の新聞紙が積まれていた。父が亡くなったのが急だったとはいえ、普段から整理整頓はしていてほしいものだ。

(女の子を連れ込むのが申し訳なくなるような空間だな……)


 もちろんキオには見えていないが、ノゾミの背後にはぴったりとミコトがくっついている。先に帰す訳にもいかず成り行きでここまで来てしまったが、彼女は空を歩けるのだから家の方角を教えれば何とかなったかもしれない。

(いや、さすがに危ないか。迷子になったら困るし)


「ノゾ君、僕、邪魔でしたか?」

「そ、そんなことないっ。むしろ手伝ってほしいくらいだ」

「ノゾ兄、何か言った?」

「ああもう気にするな。何も言ってない」


 両脇から声をかけられて、どちらに対応すべきかとあたふたしていると、チャイムの音が軽やかに部屋に響きわたった。

「ほらキオ、誰か来たみたいだぞ」

「うん」


 一旦会話が中断されたことに、密かに胸をなで下ろした。だが次の瞬間、玄関から聞こえてきた声にノゾミの鼓動が跳ね上がる。

「あっ、サユキさん! 来てくれたんだ」

「キオ君が帰ってくる気配がしたから、何か手伝えることはないかなぁって思って」

(そっか、隣に住んでるんだもんな……)


 正直なところ、サユキには少し近付きがたいものを感じていた。あのミステリアスな雰囲気が、どうも自分には合わないと思ってしまうのだ。

「実はおれ、三日後に叔父さんの家に引っ越すことになって」

「それはまた急な話だね……。キオくんともお別れなんて残念だけど、仕方ないもんね」


 ノゾミも玄関に顔を出すと、心なしか重い空気になっていた二人が振り向いた。

「こんにちは、ノゾミ君も来てたんだね」

「……引っ越しの手伝いで」

「なら僕にも手伝わせてよ」

「え、いいの?」

「うん。これだけ人数がいれば、早く終わるでしょ」

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