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4-11-1 真実

 



 葬儀が全て終わると、仕事を終えたムクロに一旦の別れを告げて解散した。

 ムクロが勤めているのは全国展開している大手の葬儀社で、今回彼は出張でここまできたそうだ。職場で倒れた父の遺体を、遠く離れたここまで運搬してきたのもムクロ達らしい。

 何とも運命とは恐ろしいもので、ムクロの本来の職場はノゾミが住む街からさほど離れていなかった。彼とはまた向こうに戻ってから連絡を取るということで、ショウも含めた四人で話し合う予定だ。




(――終わった…………)

 父の実家に帰る頃には全身が倦怠感に包まれていて、すぐにでも休みたい欲求に駆られた。それなのに、母は家に着くなり遺品の整理をすると言いだして、ノゾミとキオもそれを手伝う羽目になってしまった。

(全く、何で俺がこんなことしなくちゃならないんだ)


 不機嫌な顔を隠そうともせずに、ノゾミは淡々と作業を進めていく。隠さなくても、どうせ自分のことを見ているのはミコトだけだから構わない。

(ん? 何だこれ)

 ある引き出しを開けると、A4サイズの茶封筒が入っているのを見つけた。いかにも大切そうにしまわれていたので、きっと重要な遺品なのだと思ってそれを出してみる。


 表面には父の宛名が、その右下には、全く聞いたことも無い化学研究所の名前が記されていた。

(研究所の……遺伝子研究部門? なんでそんな所から封筒が届いてるんだ)

 しかも消印を見ると、これが十余年も前に出されたものであることが分かる。

 封筒は既に開封されていたので、何気なしに中を覗いてみた。数枚の紙が入っていて、特に変わったものはない。

 その内の一枚を引っ張り出してみて、ノゾミは目を疑った。


「……は?」

 書類に書かれていたのは、父の名前とノゾミの名前。

 その下には、とても真実とは思えない文句。


 ――お二人が親子である可能性は、2.3%です――


「何だよ、これ……」

 衝撃のあまり震える声で呟くと、ノゾミの異変を悟ったキオが形相を変えて近寄ってきた。

「ノゾ兄、それ早くしまって!」

「……お前、これ知ってたのか?」

「いいから、見ちゃ駄目だ」

「待てよ。これがどういうことなのか知ってんのか?」


 問に答えようとしないキオが腹立たしく思えてきて、つい声を荒らげてしまった。そのせいで、母が兄弟の諍いに気付いてしまう。

「二人とも何してるの?」

「母さん、この封筒……」

 キオはノゾミの手から取り上げた封筒を母に手渡す。すると、母の顔つきが険しいものになった。

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