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サユキと話しているキオは、ノゾミとそうする時よりも穏やかで肩の力が抜けているように見える。子供というほど無邪気すぎず、大人というほど落ち着いている訳ではない。
そこにいたのは弟ではなく、キオだった。
葬儀会場に向かう二人の後ろを、ノゾミは複雑な気持ちで付いていった。
中に入ると、ムクロが受け付けでの業務に徹していた。もちろん、ミコトもその隣に居る。
ノゾミはさり気なく、ミコトの元へ寄って声をかけた。
「どうだった?」
「はい、ムクロの仕事が忙しそうだったので、こっそり手伝ったりしましたよ」
どうやら、ノゾミが空虚な時間を持て余していた間、ミコトは充実のひとときを過ごしていたらしい。
あまり話し込んでいると独り言を言っていると思われかねないので、そろそろ奥へ行こうとしたらミコトに手を取られた。
「やっぱりノゾ君の傍が一番気が休まりますね」
「そう、か……」
うっかりノゾミも、ミコトの傍にいる時がほっとすると言いそうになってしまった。柄にも無いことを口走るなんて自分らしくない、とそれを封じ込める。
「行こう」
遅くなると母に小言を言われかねない。ムクロに軽く会釈をしてから、二人は葬儀会場の奥へと進んでいった。
その後、式は順調に進んでいった。
葬儀式、告別式の後に出棺し、火葬場へと向かう。何ら変わりの無い普通の葬儀が、着々と終わっていく。
式の間中誰かの涙声が聞こえていたが、ノゾミはその瞳を一切濡らさなかった。だって、泣く意味など無いのだから。
サユキは告別式までしか出席しなかったようで、気が付いたら居なくなっていた。どうりでキオが静かになった訳だ。
拾骨も済むと、父の姿は完全に消えていて。骨壺に入ってしまった今なら、誰の目から見ても“死んだ”ことになるのだろう。




