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4-10-2

「サユキさーん!」

 キオは彼に駆け寄ると、仲良さげに話し始めた。


「もしかして歩いてきたの?」

「まさか、すぐそこまでタクシーで来たんだよ」

「遠いのに、わざわざありがとう」

「ヒカルさんにはお世話になったからね。もちろん、キオ君にも」


 ヒカル、とは父の名だ。“かがやく”と書いて“輝”。

 因みにキオの名は父から貰って、“輝いて生きる”の意で“輝生”と書く。昔から友達が多くて明るい性格だったから、ぴったりの名前だ。ノゾミとは大違い。


(父さんも、仲良い人とか居たんだな……)

 彼らがどこまで深く関わっているのかは知らないが、自分にあんなに冷たく当たっていた父親が、家族でもない人間と親しくしているのが、何となく信じられなかった。

(でも、あの人だって大人だし。俺のこと嫌ってただけで、他の人はそうでもなかったんだろうな)

 自分だけが不当な扱いを受けていたからといって、今更落ち込むことはない。そんな感情は、不要なものだ。


「――、ミくん…ノゾミくん……ノゾミ君?」

「え? あ、はいっ」

 上の空だった意識を引っ張り戻されて、ノゾミは顔を上げる。すると目の前には、白髪(はくはつ)の青年の気遣わしげな表情があった。


「どうかしたの?」

「な、何でもないです……済みません」

「謝ることはないよ。僕はサユキ。キオ君とヒカルさんの隣に住んでて、仲良くさせてもらってたんだ。よろしくね」

 おっとりとした喋り方が特徴的な青年は、握手を求めて手を伸ばしてくる。


「……よろしく、お願いします」

 ノゾミはそれを躊躇(ためら)いがちに受け入れた。

 近くで見ると、白いのは髪だけではなく、肌も同様だった。その名の通り雪のような姿に、思わず見入ってしまう。

「僕のこと、気になる?」


「そっ、そんなことないです! ほんとに、全然」

「あはは、遠慮しなくていいよ。慣れてるから」

 不自然なまでに否定してしまったので、逆に肯定と取られても仕方なかっただろう。いや、気にしていなくは無かったが、もっと上手く誤魔化したかった。


 彼は握手を(ほど)くと、自らの髪の毛を指先で弄り始めた。

「昔はコンプレックスだったんだけどねぇ、今はもう気にならなくなっちゃった」

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