表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/168

4-8-2

 ミコトがノゾミの命を助けたこと。ショウと出逢ったこと。殺人鬼に目を付けられてしまったこと。

 これまでのことが簡潔に述べられていくが、さすがにムクロを犯人だと疑っていたことまでは話されなかった。


「成る程、お二人の事情は把握しました。ですが、ノゾミ様のお父様のご葬儀に私が(たずさ)われるとは……運命というのは、不思議なもので御座いますね」

「……そうだな」

 これが運命だとしたら、一体いつから始まっていたのだろう。

 もしミコトに助けられていなければ、ムクロとは遺族と納棺師という関係以上にはなっていないはずだ。いやそれ以前に、ムクロには、もしかすればショウにも出逢っていなかったかもしれない。


「それで、ノゾミ様はご自身の命を絶つために、私に体を殺してほしい――ということでよろしいのですか?」

「ああ、そうだ」

 ノゾミがきっぱりと告げると、ムクロは何かを考え込むように遠くを見つめ、顎に指を添えた。

 その時ノゾミの頭をよぎったのは、断られるかもしれない、という不安。以前、ショウに死にたい理由を問われた時のことが思い出される。


 しばらくの沈黙の後、ムクロが(おもむろ)に口を開く。

「……それでは、交換条件というのは如何(いかが)でしょう?」

「交換条件?」

「はい。ノゾミ様が死にたいと(おっしゃ)るのなら、私がお力添え致します。ですが、私にも少々込み入った事情がありまして……」


 気まずそうに微笑むムクロの内面が(うかがえ)えなくて、ノゾミは首を傾げた。

 ノゾミの体を殺すのに相当する条件とは、どんなものなのだろうか。

「私が人々の体を体現した存在だというのは、ご存じですよね」

「知ってるけど、いまいちピンとこないというか……」


 "体"というのは、他の三つ――精神、感覚、魂と明らかに違う点がある。それは、目に見え、触れられるということだ。

 体以外のものはそれがどんな形状をしているか、どこにあるのかが定かではない。だから、それを体現した人が居るという話にも納得できた。

 だが体は形もはっきりしているし、触ることもできる。それを体現する、というのが上手く理解できないのだ。


 そのことを伝えると、ムクロは小さく息を漏らして目を細める。呆れているのではなくて、子供を(なだ)めるような表情で。

「簡単な話で御座います――私の体は、この世界の人々と繋がっているのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ