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4-3-1 到着

 

      ***


 電車を乗り継いで約四時間。ノゾミは、都会から遠く離れた片田舎の無人駅に立っていた。

「はぁー……こんなに遠かったっけ」

 ここに来るのは実に八年振りで、一人で訪れるのはもちろん初めてだ。そのせいかここまでの道のりは無駄に長く感じられたし、何より酷く疲れている。


「ミコトも疲れただろ」

「僕なら大丈夫ですよ。あとどのくらいですか?」

「一応ここが最寄り駅なんだけど……歩いて四十分くらいだな」

 父の実家までは本当に遠い。これだけの時間をかけて来ても、まだ足りぬというのだから。


「悪い、ちょっと休んでからでいいか?」

「もちろんです。ゆっくりしてからにしましょう」

 さすがに四十分間歩く踏ん切りがつかず、英気を養うためにもここでしばらく休憩を取ることにした。

 小さな駅の周りを一周して自動販売機を見つけると、緑茶を買って早速ペットボトルの蓋を開ける。

 するといつの間にか隣に来ていたミコトが、大きく息を吸い込む気配がした。


「とても綺麗な所ですね」

「山と畑しか無いけどな」

「でも、空気が美味しいです」

 確かにそこは長所だろうが、このような田舎では何をするにも不便である。車を持っていないと、ろくに生活も出来ない。


「駅の中にベンチがあったので、座りませんか?」

「そうだな」

 再び駅舎に入りそこに腰を下ろすと、乾いた風が吹き込んできた。まだ外は十分に明るいが、時刻はもう五時を過ぎている。休憩もそこそこにしなければ、着くのが遅くなってしまうだろう。


「あの、僕も連れてきてもらって、本当によかったのですか?」

 どの位したらここを出ようかと思案していると、ミコトがおずおずと切り出した。

「急にどうした? 今更遠慮するようなことでもないだろ」

「ノゾ君のご家族やご親戚が集まる場ですし、首を突っ込み過ぎるのもご迷惑かと……」


 ミコトの気遣いも分かるが、彼女を部外者扱いする気は全くない。

 昨日、ショウとミコトに(さと)されたノゾミは、葬儀に出ることを母に伝えた。もちろん驚かれてたし、無理はしなくていい、と何度も言われた。だが最終的には息子が言い出したことを否定せず、受け入れてくれたのだ。


「俺の方こそ向こう側の親戚と深く関わるつもりはないから、気にするな」

 父のノゾミに対する暴力がばれた後、母は自らの面目を潰したくなかった彼に(すが)られて、何とか折り合いを付けた。もうノゾミには合わないことを条件に、父側の人間には離婚した理由は何も話していないらしい。

 だから必要以上に気張らなくても良いのだが、元々そちら側の人とは最小限の接触にしたかったノゾミは、葬儀が終わったらすぐに帰るつもりだった。

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