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「……ノゾ君は、〝命〟とは何だと思いますか?」
「命……?」
「はい」
ノゾミは少し考えてみたが、改めてそう聞かれると分からなくなってしまう。だが今までの知恵を振り絞り、何とかそれらしい答えを思いついた。
「命ってのは、俺たちがみんな持ってて、一人一つしかなくて、生きてる証で、そんで……すぐに無くなる、やつ」
最後に付け加えたのは、ノゾミの口から勝手に零れ落ちた言葉だ。やはり自分の命に対する考えはこんなものなのだと、改めて思い知った。
今の回答で良かったのだろうかと、彼女の顔色を伺う。
「そうですね。ノゾ君の考えで、ほぼ合ってます」
「ほぼ?」
「はい。質問しておいて申し訳ないのですが、この問題に答えは無いんです」
成る程、よく道徳の授業でやるようなものか。それならば正確な答えが存在しないというのも納得だ。
「ですが少し補足しておきますと、命とは眼に見えないものなんです」
「そう、なのか……?」
「ええ。貴方の体を動かすのは脳です。貴方の体が温かいのは心臓のお陰です。では、貴方の命が何処にあるのかと問われた時、それを答えることが出来ますか?」
「…………」
ノゾミは答えられなかった。
確かに、命とは脳や心臓のように無ければ生きていけない。だが、それらのように器官を指す名前ではない。
「そんなに深く考えないで下さい。僕は、命を体現化した存在なんです」
「――は?」




