表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

犬の消える時

作者: 犬飼 舎人

太平洋戦争の渦中、愛犬を軍用犬として、戦地に送り出した少女と家族を通し、

平和の尊さを描きだした物語 (犬の消えた日) が2011年8月12日


終戦ドラマスペシャルとして日本TVから放送されていた。

見識無きままの従属は、やがて健気な愛の全てを根刮(ねこそ)ぎ失う結果を招く。



井上こみち氏・原作、坂上かつえ氏・脚本による提起する人は、

ここでも女性だった。


当時、日本にいたドイツシェパードなどの使役犬の“召し出し”は、もとより、

戦況の悪化とともに、飛行服など防寒用の毛皮に使用するとして


愛玩犬の供出までを強要した残酷な背景と描写があり、そうした非道が

各地で行われた事を裏付けるように、


それは椋鳩十(むくはとじゅう)先生の(マヤの一生)にも既に描かれていたものだった。

多くの愛犬家達が愛し子を奪われ、耐えがたい哀しみを共有できた筈のものが、


「自分の犬は供出したのに、あいつの処は出さずに(かくま)っていて狡い!」

と考え、わざわざ当局に通報するという信じ難い行為が横行したのだと言う。


人の性根の本質は究極で(あら)わになると言うが、耐え難い痛みを我が身のみに

留めようとするのか、或いは「貴様も味わえ!」とばかりに行動するのか、


そうした二者択一は、人生の・あらゆる場面で散見される事になるのだろう。

 

供出と言っても、人道も既に皆無となり、コストばかりにやかましい

軍部の意向に準じた・その所行は究めて(むご)いものであった。


犬達は河原に連れて行かれ、何が起こるのか不安なままの子供にリードを持たせて

その場で撲殺するという光景の、そこには人であるべき姿など、どこにもない。


椋先生の子息は、あまりの惨さに帰宅するや高熱に倒れ、頭蓋を割られたマヤは、

激しい死の痛みに抗いながら、その夜、瀕死(ひんし)の状態で自宅に逃げ帰った。


翌朝、愛しい人の下駄の上に頬を乗せるようにして、息絶えていたのだという……

人間であれば、連れて行った者すら呪って死んだ事だろう。




更に惨い事に、当時の処理技術では犬の毛皮を防寒着として利用できなかった

と言う理由で、その後・山地に大量に投棄されていたという、


やるせない証言が知られる事になり、

食用にしたかったのではないかという証言さえあった。


実際・戦後の食糧難には、犬猫どころかネズミの肉さえ売られたと言う。 

飢えと人心の荒廃とは、そうゆうものなのかと思い知らされる現実ではあった。



その後・戦地の軍用犬の顛末(てんまつ)もまた、悲惨という言葉では

言い尽くせない証言として、私達は知る事になった。



銃撃に被弾したり、爆死した犬達は、まだ幸せだったとも言える。

生き残った犬達は、本土に連れ戻される事もなく放置され、


逃げ戻る兵隊達のトラックを何処までも、走り(した)い追って……

やがて小さく見えなくなったと言う……


現地住民の証言では、憎い敵国の犬は格好の憂さ晴らしとなり、ましてやの

状況では餓えた人々が充満していた時期でもあった。


訳も分からぬままに、人に接した多くの軍用犬達は撲殺され煮られた……


何処をどうやって腐らせて行けば、衆生の心は、ここまで墜ちて

鬼になる事ができるのだろうか。


見せかけだけのものを信じ、思いつきだけのものに、

多くの命運を預けた歴史の経緯と結果を、自ら知ろうと思わなければ、


好転の機会は再び閉じられ、悲劇は何度でも繰り返される。

たとえ未熟な法律がどうであろうと、命は物ではないのだ。


余談になるが、現在のペット産業と呼ばれる業界の苛烈さは、如何なるものか、

欲望と非道を(とど)めんとする、良識の熟成を切に希求したい。


おりしも2016年6月20日に選挙権年齢を十八歳以上に引き下げるという

公職選挙法が改正されたが、毎年の如く周知となる成人式の醜態が政治に投影


される事にでもなれば、更に笑い事にはならないだろう。

異質の事象と思うだろうが、すべて非道の根源は同質のものだ。   

薬害の影響薄く、賢明で正常な婦女子の抑止力に希望をみる他はない。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 私は1972年で、長崎で生まれ広島で育ち、原爆以外の戦争の知識は全くありませんでした。戦争は何もかも利用するのですね。弱ければ弱いほど…… [気になる点] 特に思い当たりません [一言] …
2016/08/11 03:56 退会済み
管理
[一言] 選挙法改正に因んだエッセイを読ませていただきました。 先の大戦中に、軍用として使役する為の【犬の供出】に纏わる悲劇があったのですね。 私は、このような残酷な史実を知りませんでした。 …
2016/06/22 15:06 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ