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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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帰る手段

 作業自体はあっさりと終え、俺は迷宮管理者となったのだが……そこからこの管理領域内に元の世界の体があるのかを確認する作業に入る。


「ベルンザークの管理領域内にあると思うけど……いや、もしかするとプレルの管理領域か?」


 もしそうなら押し入って事情を聞かないと。それでもし俺の体が消え去っていたなら……一発くらいぶん殴ってもバチは当たらないよな。

 そんな風に胸中で呟いた時、俺は迷宮の一部分に相当な魔力があることに気付いた。


「これは……ビンゴかな?」


 呟きながら素早く移動開始。それなりに距離があるので時間は掛かるが魔物もいないので、特に問題はなく到着することができた。

 そこは、どうやら実験室のような場所。よくわからない器具がいくつも転がっており、部屋に入るのが一瞬躊躇われるくらい。


 そうした中に……部屋の中央に天井を支える柱のように太く大きい一本のガラス容器が存在していた。その中には光の塊……それが動くことなく佇んでいる。


「力の根源はこれみたいだな……で、これは一体――」


 そこまで呟いて、俺は一つ察した……その、この光の塊に俺はなんとなく引き寄せられている。まるで、この光そのものを以前から知っているような――


「……まさか、これが俺の体なのか?」


 口にして、おそらくそうだろうという考えが頭の中に浮かぶ。もしそうなら目的は果たしたことになるんだけど……これ、どうにもならないのではないか?


「一度、相談してみるか……」


 とりあえず『ゼノ』の所へ戻ってみよう……というわけで、俺は迷宮を引き返した。






「形状は変化しているようだが、それでも体があるのなら戻ることはできるぞ」


 ――そして事情を説明した『ゼノ』の返答は、驚くべきものだった。


「ほ、本当か?」

「ああ。おそらく人間の体のまま保存しておくのが面倒だったため、そういうことになったんだろう。魔力の質そのものが変わっていないのなら、その魔力内にある人間であったことの形状に変換すれば、器自体は元に戻せるし、おそらく元の世界へと戻ることも可能だ」


 やった……! 心の中でガッツポーズをした後、俺は質問を行う。


「具体的にどういう手順なんだ?」

「まず器の変換を行い、その器に残っている情報を基にして元の世界へ帰る魔法を生成する。私の力ならば十分可能だ」


 そこまで言うと、彼は口元に手を当てた。


「より正確に言うと、この世界に来る前の状況に戻す……という表現が近いのかもしれない。器を再生するのではなく、器が元の形になるまで時空を巻き戻すという表現か」

「それならまだわかりやすいな……それで実際に実行するには何か必要なものとかあるのか?」

「器が見つかった以上はすぐにでも取りかかることができる……が、一つ問題がある」

「問題?」

「君を元の世界に送還するには当然魔法を使う必要があるし、なおかつ次元を超えるためかなりの力を消費する……ベルンザーク達がそれを実行した際、迷宮にはかなりの魔力が満たされていたはず」

「その魔力が足りない?」

「足りないというより、タイミングを合わせないといけない」

「タイミング?」


 聞き返すと『ゼノ』はさらなる解説を行う。


「迷宮内に存在する魔力は、常に一定ではなく可変……その魔力を利用してベルンザーク達は君の体を引き寄せたはず。そしてその際、迷宮内には通常と比べて多量の魔力が存在していたはずだ」

「そのタイミングがしばらく来ないってことか?」

「……戦いがあったためか、現在迷宮内では魔力が高くなっている。おそらくだが、ベルンザークが部下を用いて色々と動いていたのは迷宮内の魔力を高めるためだったのかもしれない……ともかく、大きな戦いがあったため現在迷宮内には君が引き寄せられた状況と似ているとは思う」

「けど、時間が経てば元に戻る……ってことか」

「そうだ」


 ……ベルンザーク達がどんなやり方で俺を引き寄せられるだけの魔力を集めたのか……調べればわかるのかもしれないが、少なくともまともな方法ではないだろう。もし俺が犠牲などなく帰るには、今が最大のチャンスってことか。


「……帰還する魔法は私が責任を持って私が作成しよう。一日程度で作成はできる」


 そう『ゼノ』は改めて口にした。


「だから君は、身の振り方を考えてくれ」

「……刻限は、どのくらいだ?」

「三日前後といったところか」


 三日……もし元の世界に戻るとしたら、それまでに色々とやっておけってことか。


「この世界を訪れて、君も色々とあったはずだ」


 『ゼノ』は俺へと告げる。


「時間は非常に少ないが……戻るか戻らないかの判断を、今から数日でやってもらう必要がある」

「……わかった」


 俺は頷き、まずは――


「帰還するための魔法は、俺の体が存在している場所で、か?」

「魔法には少しばかり調整も必要であるため、その光をここへ移動させておく。問題ないようにはするから心配しないでくれ」


 俺は頷く……さて、どうやら刻限は迫っているが帰ることのできる目処は立ったようだ。

 ともあれ、どうするのか……この世界のことを考えれば、ベルンザークを倒した俺はここに留まって活動するべきなのか――


「もし君が帰ったとしても、問題ないようには取りはからう」


 そう『ゼノ』は告げた。


「そこについては心配してもらわなくてもいいさ」

「……ベルンザークの管理領域についてはどうするんだ?」

「魔族と顔を突き合わせて話をするのは避けたいが……少し調べてみて、信頼できそうな存在と話をすることにしよう」


 迷宮支配者の能力だろうか……ともあれ、俺がいなくとも大丈夫なよう処置をするというのはわかった。


「……確認だけど、なぜそうまでするんだ?」

「君は私の失態……力が漏れ出てしまったことによってこの世界へ来てしまった。なおかつ騒動を解決してくれた。理由としては十分だろう」

「そっか……わかったよ。この三日でどうするかは決める。ところで、もしこの機を逃したら……」

「人為的にどうにかしようとしない限り、魔力は集まらないかもしれない。あるいは迷宮のどこかに眠っている魔法道具でもあれば別かもしれないが、期待は薄い」

「そっか……うん、わかった。このチャンスを逃しても可能性はあるけど、相当な無理をしなければならないってことだな」

「そうだ……時間がなくて申し訳ないが」

「いや、いいよ。ありがとう。それじゃあ俺はこの三日で結論を出せるよう行動させてもらうよ」


 まずは――この戦いの顛末を、人間側に伝えなければ。そう思い俺は迷宮を引き返す。時間が無いためか、自然と駆け足になっていた。


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